【米国株ウォッチ】年初来60%高のネットフリックス、大幅下落のシナリオはありうるか
ネットフリックスの株価はニュースに非常に鋭く反応する傾向がある
さらに、コンテンツ製作費の高騰により、ここ数年のフリーキャッシュフローは低水準、もしくはマイナスとなっている。2019年から2022年にかけてネットフリックスが生み出したフリーキャッシュフローは合計しても3億ドル(約457億円)に届かない。2023年にはフリーキャッシュフローは69億ドル(約1兆521億円)超にまで持ち直したものの、これは主に米国で発生した作家や俳優によるストライキにより、製作費が約40億ドル(約6100億円)減少したことに起因する。その製作費は2024年に再び増加し、約170億ドル(約2兆5920億円)になることが予想されている。 コンテンツ製作費の高騰が続き、先述した収益の鈍化が現実化した場合、純利益率は約20%ほどの水準に留まる可能性がある。この場合、2027年の純利益は90億ドル(約1兆3724億円)程度となり、2024年の予測値からわずか3%しか増加しないことになる。 ■投資家の期待値が低下する可能性 記事執筆現在、ネットフリックスは予測利益の約37倍で取引されている。ネットフリックスの最近の業績は好調だが、市場は近視眼的になりがちで、短期的な成功を長期的な予測に当てはめてしまう傾向がある。ネットフリックスの場合、市場参加者が抱く期待は、ネットフリックスの会員数は好調な増加を続け、収益も2桁の伸びを維持するだろうというものだ。しかし、先述したように、パスワード共有の取り締まりや広告付きプランの二重の恩恵はやがて落ち着き、今後の会員数の伸びは鈍化する可能性がある。 仮に、今後投資家のネットフリックスへの期待値が低下し、PER(株価収益率)が2027年までに約20倍の水準まで低下するとしよう。純利益が先に計算した約90億ドル(約1兆3724億円)になると仮定すると、2027年における時価総額は約1800億ドル(約27兆4500億円)、1株あたりの株価に換算すると400ドル強となる計算だ。 このようなPERの低下は極端な仮定であるように見えるかもしれないが、ネットフリックスの株価はニュースに非常に鋭く反応する傾向がある。過去には、コロナ禍による成長が減速しつつあることが明らかになった2021年10月から2022年5月、ネットフリックスの株価はこのわずか数カ月の間に70%以上下落したという例もあることには留意が必要だろう。
Trefis Team