「奨学金返還の苦悩」 奨学金=借金?返済総額1000万円でかなえた夢
奨学金を利用して大学に通っている学生の割合は2人に1人ともいわれています。 多くの人が利用している奨学金には給付型と貸与型の2つがあり、日本学生支援機構の奨学金利用者では給付型がおよそ2割で、大半が返還が必要な貸与型を利用しています。 奨学金返還の課題について取材しました。 奨学金の返還について街で聞いてみると「(月々の返済額は)だいたい3万円ぐらい。貯金があまりできないというのは感じている」と話す人や、深く考えずに“借金”を背負うことになってしまったと話す女性は「紙切れ1枚で借りられたので、こんなに大変とは思っていなかった。(結婚・出産を考えた時)相手にも負担をかけてしまうかなと考えてしまう」と話す人もいました。 街から聞こえてくるさまざまな“苦悩の声”などに対する思いをYouTubeで発信している人もいます。『学生時代の奨学金1000万円を返済中。11年目の病院看護師』と自ら発信するなど、看護師として働きながら奨学金に関する動画投稿をしている「看護師まろ」さんを取材しました。 まろさんは「僕の場合、1年目の給料が手取りで16~18万円ぐらいで、その頃の返済額が毎月5.5万円だった。実質的に自分が使える金額が十数万円ぐらいだった。これだけ頑張っても十数万円の世界なんだ、自分の人生は、みたいな気持ちになって。それが結構つらかった」と話します。そして「みんな悩んでいても、お金のことや人に言えない気持ちはたくさんあるんだろうなと思った」といいます。 返済に追われつらい日々を過ごした経験から、奨学金の悩みを気軽に相談できる場所になればと動画の投稿を続けています。まろさんは「大前提として、奨学金そのものは悪いものではないと僕は思っている。実際、僕も奨学金を借りて看護師になるという道を作ることができたので、どちらかといえば、制度自体にはすごく感謝している」と話します。 奨学金によってかなえられた夢──。しかしあくまで“借金”であるという意識を高校生のうちから持つことが重要だと訴えます。まろさんは「奨学金がいいとか悪いとかだけでなく、借りた後、自分がそのお金をどう扱っていくのか、学ぶ機会が子どものうちからあったらいいと思う。それらを通して、奨学金制度をうまく利用できる人が増えるといい」と話しています。 <「奨学金負担」軽減へ…広がる取り組み> 奨学金に関する負担を軽減するための取り組みは企業や自治体でも広がりを見せています。 人材派遣などを行う東京・大田区に本社のある「日研トータルソーシング」では新卒社員を対象に、上限月1万円を最長5年間支給する奨学金返済に関する支援を行っています。 これまでおよそ1400人が支援を受け、会社としても長期的な雇用につなげることができ、双方にメリットがあると担当者は話しています。 制度を利用する社員からは「金銭的な不安は低減されるのでありがたい。支援してもらっているので、恩返しではないが、長く就業できれば」といった声も聞かれました。 こうした支援制度は自治体でも行われています。八王子市では30歳以下で5年以上定住する人を対象に給付を行っています。また、給付上限額は八王子市内に就職をした場合は年間10万円、八王子市外に就職した場合は年間8万5000円としていて、若年層の定住の促進につなげたい考えです。 八王子市・学園都市文化課の担当者は「八王子は学園都市なので、多くの学生が入学と同時に市内に転入してくる。学生時代だけ八王子に住むのではなく、そのままここで子育てもして、長く住んでもらうことにつながったらすごくうれしい」と話しています。 <広がる教育支援 他にも…> 東京・品川区は2025年度から、所得制限のない給付型の奨学金を開始することにしています。また、文部科学省は2025年度から、扶養する子どもが3人以上いる「多子世帯」の大学授業料無償化を開始します。第1子から対象となり、こちらも所得制限は設けられていません。 支援の拡充が、未来を担う若者の選択肢を広げる一助となることが期待されています。