「視神経乳頭陥凹」を指摘されたら症状がなくても必ず眼科へ【一生見える目をつくる】
【一生見える目をつくる】#38 緑内障は、日本では60歳以上の6人に1人が罹患(りかん)しているといわれています。視野が少しずつ欠け、進行すると失明に至る病気ですが、私たちは普段両方の目でモノを見ているため、どちらか片方の目の視野が欠け始めてもなかなか気がつきません。 バイオリニスト古澤巖さんは10年前に緑内障が発覚「音楽家でよかった」と 人間の体の仕組みとはすごいもので、視野が欠けていないもう片方の目が、欠けている目の分まで見え方をフォローするからなんです。特に視野の上部から欠けていくケースは、かなり気がつきにくい。緑内障は眼科でしか早期発見できないと認識すべき。リスクが高くなる40代以上の方は、定期的に眼科の検診に行って緑内障になっていないかをチェックするようにしてください。 健康診断などで眼底検査を行うこともあると思います。この検査で「まだ緑内障にはなっていないけれど、そのシグナルがある」という、いわば予兆を見つけることができます。 緑内障の兆候がない人の眼底は、視神経の出口にある「視神経乳頭」という場所が、真ん中から根っこが四方に生えているように見えています。そして目の一番底、つまり眼底には網膜という非常に薄い膜がピンと張られている。 眼底検査では網膜と、そこを走る血管の状態をチェックし、視神経乳頭が奥の方に押されているようにへこんでないかを確認します。へこんで見えていたなら、それは緑内障のシグナル。眼科で視野検査を受けるように指導があるはずです。 視神経乳頭が奥にへこんでいる状態を「視神経乳頭陥凹(かんおう)」と呼びます。緑内障では視野が欠ける前に、この視神経乳頭陥凹が大きくなっていくんですね。これを「視神経乳頭陥凹拡大」と呼びます。 視神経乳頭陥凹拡大が見られたなら、眼科で視野検査を受ける必要があります。機械の前に座って、光が見えたら手元にあるスイッチを押す。非常に簡単な検査ですが、これによって光に関する感度を調べることができます。 感度の悪い範囲が広がっていると、「緑内障の兆候あり」と医師は判断。この時点から緑内障治療の目薬を使用することをすすめます。視野欠損の進行を食い止めるためです。ところが、これがなかなか患者さんとしては受け入れがたいようなんですね。 視野欠損が始まってない時点での治療ですから、ご本人に「視野が欠けていく」とお話ししてもピンとこない。「なにも困ってないのに、毎日目薬を点眼しなければいけないなんて面倒だな」と感じる方が多くいらっしゃる。けれども、緑内障の治療の決め手はなんといっても「早期発見」。これに尽きるわけです。 早い段階で見つけ、毎日定められた目薬をきちんと点眼する。こうすることでかなりの確率で生活に必要な視力を寿命まで保つことができるのです。 (荒井宏幸/クイーンズ・アイ・クリニック院長)