低アル人気 日本酒はソーダ割りで 酒好きタブー視も…若者に人気
日本酒の炭酸水割りが人気を呼んでいる。暑い夏にピッタリの爽やかさと、ゴクゴク飲めるアルコール度数の低さが特徴で、居酒屋などで提供店舗数が拡大中。メーカーでは、炭酸水割り専用の日本酒を新たに開発する動きも出てきた。日本酒の国内消費量が右肩下がりとなる中、消費拡大の起爆剤としても注目が集まっている。 【グラフで見る】日本酒の国内出荷量の推移 今年4月、日本酒メーカーや卸、小売りなどの有志約60社でつくる日本酒需要創造会議が発足した。低迷する日本酒の消費を盛り上げる狙いで立ち上がった同会議が重視するのが、若年層の需要開拓。その一手として5月、「日本酒ハイボール(酒ハイ)」を訴求していく方針を固めた。 同会議が提唱する「酒ハイ」では、日本酒と炭酸水の比率は1対1で、日本酒の銘柄にはこだわらないとする。同会議事務局の担当者は、「アルコール度数が低く、日本酒に慣れていない人でも飲みやすい」と勧める。
飲みやすさ 若者に訴求
「酒ハイ」の提案は急速に広がっている。小売りチェーンのカクヤス(東京都北区)は8月から、首都圏の約160店舗と自社の電子商取引(EC)サイトで、「酒ハイ」を訴求するキャンペーンを開始。飲食店向けにもカクヤスが開発した「酒ハイ」メニューを提案するなどして、「東京都内だけでも既に180店以上で『酒ハイ』が楽しめる」(同社広報担当)という。 炭酸水割りを提案する動きは同会議だけではない。酒類専門のECサイトを運営するKURAND(東京都足立区)は、2017年から炭酸水割りを勧めている。夏になると日本酒の消費量が落ち込むことへの対応で始めた取り組みで、「KURANDユーザーには定番化してきた」(広報担当)という。 同社は、炭酸水割りをアレンジした飲み方も提案する。ブドウ「シャインマスカット」やラムネ味のアイスをトッピングする方法で、「スイーツのような楽しみ方ができる」(同)とアピール。交流サイト(SNS)でも話題を呼んでいる。 炭酸水割り専用となる日本酒の開発も進む。新潟県の笹祝酒造は、割ることを前提にアルコール度数を高めた「清酒ハイボール」(720ミリリットル、1210円)を販売。炭酸水で割っても日本酒本来の味わいが損なわれない点が強みで、「華やかでサッパリと楽しめる」(笹口亮介社長)。
日本酒の国内消費量は減少傾向にある。23年の国内出荷量は39万キロリットルで、前年比1・4万キロリットル減。ピークだった1973年のわずか2割程度となった。近年の需要減少の背景には、低アルコール商品を好む消費動向も影響している。その中で、日本酒の炭酸水割りに対する業界の期待は大きい。日本酒需要創造会議事務局の担当者は「日本酒を割るのをタブー視するのは酒好きの考え。炭酸水割りの普及を通じて、消費の裾野を広げていきたい」と話す。 (鈴木雄太)
日本農業新聞