「本当の地面師」の実態は普通のビジネスマン…ドラマよりエグい悪質不動産ブローカーの"最新手口"
■なぜ不動産ブローカーはいなくならないのか 不動産ブローカーを見分けるのが簡単なら、なぜ彼らは今日の不動産取引でも暗躍しているのか。その理由は、不動産ブローカーのもたらす不動産情報が必ずしも地面師のような問題のある情報ばかりではないからです。 土地を仕入れ、仲介する不動産会社の立場からすれば、他社よりも先に好物件を押さえて業績を向上させるのが責務。不動産ブローカーが宅建免許を持っていないとしても、真に良い物件の情報を持っている場合もあります。紹介があれば、貴重な情報源としてやり取りをしてしまうのが実情です。 前述したように、昨今では話を持ちかけてくる不動産ブローカーが会社の重役であるなど、業界には出回っていない身内の物件情報を提供する者もいます。そこで不動産会社の中には「コンサルティング料」という名目で報酬を支払うか、取引の間に宅建免許を所持する正規の不動産仲介業者を挟んで合法化を企み、不動産ブローカーから物件を融通してもらおうと画策するようなものもあるのです。 一部では暗躍している不動産ブローカーですが、個人が住宅を購入する場合は、ほぼ被害に遭うことはないので安心してください。ただし不動産ブローカーが紹介した土地は、詐欺や脅迫によって譲渡されたり、遺産相続でトラブルを抱えたりしていた可能性が排除できません。そうしたいわくつきの土地を購入した場合、たとえすでに登記を自分に移していても、土地トラブルで民事訴訟が提起されると、売買取引自体が無効になるおそれがあります。 また、不動産ブローカーは宅建免許を持っていないがゆえに、売買する物件は信用保証協会や保険会社に加入していません。そのため、トラブルが発生すると、取引代金が返金されずに大損失を招きます。 個人で物件を購入する際も、不安であれば直接物件を紹介した仲介会社のほかに売主との間に介在している者がいないかを確認し、前出の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムでその者の素性を確認しておきましょう。 いずれにせよ地面師は、ドラマよりも巧妙に詐欺を働いており、司法書士でも見分けるのが難しいレベルです。もっと広く見れば不動産ブローカーのようなあこぎな存在も暗躍しており、そうしたグレーな存在を排除することが極めて困難であることも事実。我々は不動産詐欺の防止に精一杯取り組んでいますが、残念ながら今後も詐欺が絶えることはないでしょう。地面師や不動産ブローカーは、あなたの身近にも潜んでいるかもしれません。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月1日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 福田 龍介(ふくだ・りゅうすけ) 司法書士、フクダリーガルコントラクツ&サービシス司法書士法人代表 早稲田大学法学部卒業後、大手司法書士事務所等の勤務を経て現事務所を設立。TAP実務セミナーにて、不動産詐欺防止に関する講座「地面師と新・中間省略登記」を提供している。著書に『新・中間省略登記が図解でわかる本』(住宅新報社)。 ----------
司法書士、フクダリーガルコントラクツ&サービシス司法書士法人代表 福田 龍介 構成=佐藤隼秀