「本当の地面師」の実態は普通のビジネスマン…ドラマよりエグい悪質不動産ブローカーの"最新手口"
■物証だけで地面師を見抜くのはほぼ不可能 厄介な地面師詐欺ですが、当社が事案を未然に阻止したケースもあります。 売主側の不動産仲介事業者から決済前に預かった印鑑証明書のコピーの印字のフォントに違和感があり、当局に持ち込んだところ偽造が判明したのです。 管轄の法務局により行間やフォントが微妙に違うことがあるため、通常であればプリンターの個体差として見過ごしていたかもしれません。しかし当該事案は、建物が取り壊し間近のビルであるにもかかわらず、売主から一区画だけ内見を拒否されているとの不満を買主からもらっていたので、もともと怪しい取引だと感じていました。 このように、地面師詐欺を看破するときは、何か決定的な理由や証拠が暴かれたというよりも、細かい違和感がいくつも重なって勘繰るパターンが多いです。地面師たちの工作はとても巧妙で、常日頃から注意を払っていないと詐欺だと断定することが難しいです。 詐欺か疑わしいため、当事者の関係性に注意した事案も紹介します。ある再開発地域で、地主が土地を明け渡す代わりに保有していた現在建設中のマンションの権利を売却するという案件が持ち込まれたことがありました。その事案では当初、不動産会社Aから「地主が、マンションの権利を売るから決済をお願いしたい」という依頼が入りました。詳細を伺うと、地主から地主が運営するという法人にいったんその権利を売却し、次にその法人から不動産会社Aが権利を買い取り、さらに不動産会社Aがその権利を他社に売却するという転売事案でした。 行政などの許認可が売買に関係する再開発地域でそのような転売スキームを組むことは珍しく、金額も大きい取引でした。本事案ではAは正規の不動産会社でしたが、地主と法人の売買が虚偽ではないか、つまり地主はなりすましで地主と法人が共謀し、Aに対して詐欺を働いていないか留意して進めるべきと考えました。 そこで地主が運営するという法人の商業登記簿を調べたところ、地主は法人の役員として登記されておらず、地主と法人のつながりが不明瞭でした。 Aには弊社が担当する場合、関係者と会わせてほしいと伝えましたが、結局その事案は他の司法書士に依頼することとなり、話は立ち消えになりました。本事案は詐欺かどうか不明なままでしたが、取引の中で関係者を多数登場させて、スキームや手口を複雑に見せるのも地面師の常套手段です。