「本当の地面師」の実態は普通のビジネスマン…ドラマよりエグい悪質不動産ブローカーの"最新手口"
■大手企業の総務部長が「手付金詐欺」に加担 こうした地面師の実態を見ていると、ドラマ『地面師たち』の劇中では「ありえない」ポイントがいくつか見えてきます。第1話の売買取引のシーンを参照して解説しましょう。まず一つは、権利証を紛失した際に作成する本人確認情報を弁護士に作成させたことです。 そもそも弁護士が必ずしも不動産の実務に精通しているわけではありませんが、不動産取引を知らない人からすると、弁護士が書類作成したことで、それとなく信憑性が担保されているように思えます。しかし、我々のようなプロからすると、地面師詐欺であることを疑うので逆効果です。 一方、劇中で比較的リアルだったのは、本人確認のシーン。生年月日や干支、普段どこのスーパーで買い物をするかを聞いていた場面です。 本人確認で重要なのは、イエスかノーの二択では回答できない質問を行い、替え玉でないことを見極めることです。ただ、ドラマでは替え玉の地主が回答に詰まった際、過緊張に陥り失禁した(ように見せかけた)シーンがあったかと思います。ドラマではそのまま売買契約を続行していましたが、我々が関与していれば決済をいったん止めます。当人の判断力に疑念が生じたからです。ドラマの演出にしても、やりすぎではないかと見ていましたね。 ここまでは取引代金の全額を奪取する詐欺を見てきましたが、より詐欺に遭う確率が高いのは「手付金を騙し取る」ケースです。物件の紹介料やコンサル料として金銭を事前に詐取するやり口ですが、こうした手付金詐欺で暗躍しているのが「不動産ブローカー」の存在です。 不動産ブローカーとは、宅建(宅地建物取引業)の免許を保持せず、違法に不動産仲介や紹介を行う存在です。宅建免許を失効した元不動産業従事者や免許を取得できない反社会勢力など、何らかの事情を抱えた個人が情報を回しているケースがあるのです。 特に注意が必要なのは、一般企業で働く役員等が「自社物件を売り出す」という虚偽情報を流布して、仲介料をせしめるケースです。 大手化粧品会社の総務部長が実在する自社物件を勝手に売りに出し、契約時に手付金をもらって失踪するという、信じ難い事案もありました。 ドラマを見ると、地面師や不動産ブローカーは専門の裏稼業という印象を抱きます。しかし、実際はいわゆるビジネスパーソンで、自社情報を把握できる立場の重役が、身内を裏切る形で詐欺を働くケースなどもあります。 不動産ブローカーを見抜く方法は簡単です。各都道府県庁にある宅地建物取引業者名簿や、国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで調べれば、相手が宅建免許を所有しているかどうかはすぐにわかります。 なかには「宅建免許申請中」と虚偽の説明をして言い逃れる人もいますが、そういう場合は仲介手数料の金額で判断しましょう。本来、宅建免許を取得している正規の不動産仲介者であれば、仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円(物件の売買価格が400万円を超える場合)」と決まっています。一方、不動産ブローカーが受け取る手数料は金額に限りがありません。