「本当の地面師」の実態は普通のビジネスマン…ドラマよりエグい悪質不動産ブローカーの"最新手口"
多額の代金が騙し取られる地面師事件は、なぜ繰り返し起こっているのか。司法書士として数々の詐欺師を撃退してきた福田龍介氏に、不動産詐欺の実態を聞いた。 【図表】『地面師たち』のモデルとなった詐欺事件とは ■不動産詐欺の事実はほとんど秘匿されている Netflixのオリジナルドラマ『地面師たち』が人気です。2017年に大手ハウスメーカーが数十億円を騙し取られた、実在する不動産詐欺が題材となっていることでも話題を呼びました。 私は司法書士として、これまで数々の不動産詐欺などの事件に遭遇し、すべて撃退してきました。そこで今回は、地面師とは一体どのような存在で、どういった手口で詐欺を遂行するのか。その巧妙かつ悪質な実態を明かしたいと思います。 そもそも地面師とは、土地の所有者になりすまして物件の売却を持ちかけ、多額の代金を騙し取る詐欺集団のことです。一連の犯行を指示する「主犯格」を頂点に、売主と買主の仲介を行う「交渉役」、なりすましの地主を見つけて演技指導を行う「手配師」、パスポートや免許証などの書類を偽造する「道具屋」、弁護士や司法書士を装う「法律屋」などがいて、組織的に買主を食い物にすると言われています。 司法書士は、不動産の売買などによる名義変更や、抵当権や借地権に関する登記などの実務を担います。地面師と共謀する形で物件の売買に携わった経験は当然ありませんが、クライアントをサポートする中で、間接的に地面師が絡んでいる事案に出くわすことがあります。 地面師が絡む不動産詐欺には大きく2種類あります。一つは前述の事件のように、取引代金の全額を奪取するもの。この種類の事件は被害額が大きく、会社が詐欺に遭ったことを秘匿しているケースも多々あり、全国規模のハウスメーカーが地面師に2億~3億円を奪取された事件も耳に入っています。 もう一つが手付金(売買契約が成立した際の前金)をせしめるものです。コンサル料や紹介料と謳って取引前に金銭を要求し、そのまま失踪するパターンです。某製薬会社の会長が数億円を騙し取られた事件はマスコミでも報道されました。こちらは詐欺のスケールが小さい分、被害例も前者に比べて10倍以上あると思われます。私が講演や研修を行った際、終了後に「実は弊社も不動産詐欺に遭っていて……」と相談されることは珍しくありません。