小保方氏の博士論文「猶予付き」取り消し 早稲田大の甘い判断
10月7日、早稲田大学は会見を開き、小保方晴子・理化学研究所ユニットリーダーがに授与した博士学位の取り消しを決定したことを明らかにしました。ただし、小保方氏が1年程度の猶予期間内に論文指導と研究倫理教育を受け、論文を適切に修正した場合には、学位を取り消すことなく維持する、としました。 つまり現時点では小保方氏はまだ博士号を所有しており、修正できなかったら取り消す、という「執行猶予つき有罪」になったわけです。それは大学側の指導や審査にも大きな問題があったから、と鎌田薫総長らは何度も強調しました。今年7月、同大学が設立した調査委員会は、小保方氏の博士論文を、博士号の取り消しには該当しない、と結論づけました。盗用などの不正行為があると認めているにもかかわらず、です。 この論理は多くの人には理解困難で、各方面からの批判を浴びました。
「取り消さない」調査委とは異なる判断だが……
大学の判断は調査委員会の判断とは異なるものとなりました。このことは、小保方氏が論文ではなく「草稿」を提出したことは研究者としての基本的な注意義務を怠ったことであり、この草稿によって最終的な判定が行われたことが学位規則にある「不正の方法により学位の授与を受けた事実」に該当するからだ、と説明されました。 そして、「大学側の指導や審査にも大きな問題があった」という判断をし、論文の主査を務めた常田聡教授には停職1か月、副査の准教授には訓戒の処分が下されました。なお総長は役職手当の20%を5か月分返上するとのことです。 また、同大学はすべての研究科において、「不適切な博士論文」がないかどうかを調査中であることを明らかにしました。現在までに約700件の論文を確認し、すべてに学位授与に相当する「研究の実体」があることが確認されたものの、研究の本質的な部分ではない部分に「不適切とみなされる箇所」のあるものが複数発見された、といいます。これらは、学位の取り消しには当たらなくても、放置することが不適切と判断された場合には、本人と連絡を取り、適切な措置を行うとのことです。 そのうえで同大学は、再発防止のために「ガイドライン」を策定したと発表しました。ガイドラインでは、「研究倫理教育」を学位取得の必修要件とすること、指導体制を強化すること、論文作成の途中での提出物や指導記録を系統的に管理すること、などが定められました。