小保方氏の博士論文「猶予付き」取り消し 早稲田大の甘い判断
コピペも場合によっては認められる?
筆者は、早稲田大学が主に問題としたのは論文中の不正というよりも、本来の論文ではない「草稿」が提出されてしまったことなのだと理解しました。 小保方氏の博士論文には、その導入部分にアメリカのウェブサイトからの盗用が多数あることも問題になりましたが、ある記者に「コピペは研究者として問題ないのですね?」と尋ねられた鎌田総長の回答は「場合による」というものでした。導入部分とはいえ、コピペが認められるというのは論文のあり方として大いに疑問があります。
同大学の学位規則には「不正の方法」が発覚したときには、授与した学位を取り消すことが明記されています。そうしなかったのは、大学側の指導や審査にも問題があったからだ、と鎌田総長らは繰り返し述べました。しかし、もしそうであるとしても、学位を一度取り消してから再提出を求めて、その結果がよければ再授与する、という判断もあったはずです。 また、今回の判断に至る過程にも疑問があります。たとえば、論文審査に加わっているはずなのに、その論文を読んでいないと発言したハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授へのヒヤリングは、いまだに行われていないことが明らかになりました。 論文取り消しは猶予期間つき、指導者に対する処分はわずか1か月の停職という甘い今回の判断によって、早稲田大学、さらには日本のすべての大学が授与する博士号の価値が貶められないことを祈るばかりです。 (粥川準二/サイエンスライター)