《連載:茨城県内2024 10大ニュース》大相撲、大の里快進撃
■最速Vから最速大関 相撲界に新星が誕生した。二所ノ関部屋(茨城県阿見町荒川本郷)の大の里(24)=本名中村泰輝、石川県出身=は規格外の強さで快進撃を続け、数々の記録を打ち立てた。5月の夏場所で初優勝、9月の秋場所も制して初土俵からわずか9場所で大関に昇進。初優勝は所要7場所で史上最速、大関昇進も昭和以降では最も速かった。 初土俵は昨年5月の夏場所。幕下10枚目格付け出しでデビューすると4場所で新入幕を果たした。実力者ぞろいの幕内でも勢いは衰えず、2場所続けて11勝と優勝争いに絡んだ。 192センチ、182キロの巨体を生かした出足の鋭い攻撃相撲が何よりの魅力。持ち味を遺憾なく発揮したのは新三役に昇進して迎えた5月の夏場所。初日に横綱照ノ富士を破って勢いに乗り首位争いを演じると、14日目に単独首位に。勝てば優勝が決まる千秋楽では阿炎を押し出し、12勝3敗で賜杯をつかみ取った。最速優勝の快挙を達成した大器は「1年前は想像もしていなかった」と喜びをかみしめた。 大関取りが懸かった名古屋場所は取り口を研究され苦戦。序盤から黒星が先行し9勝4敗に終わった。馬力だけでは勝てないことを痛感し、苦悩する逸材を立ち直らせたのは師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)だ。秋場所前に自ら土俵に立つ異例の稽古を敢行。馬力で勝る弟子に対し、親方は現役時代さながらの左おっつけや厳しい寄り身で応戦。立ち合いの技術や駆け引きを身をもって伝授した。 大関昇進の再挑戦となった秋場所で、早速成果を見せつけた。まわしにこだわらず、どんどん前に出る圧巻の戦いぶりを展開。初日から破竹の11連勝と、横綱不在の場所で主役を張った。13日目に大関琴桜を取り直しの末に破り優勝に王手をかけると、14日目は大関豊昇龍を押し出し2度目の賜杯、大関昇進を手中に収めた。師匠の教えを胸に迷いなく突き進んだ大の里は「最高の相撲が取れた」と喜びに浸った。 日本相撲協会は秋場所後の9月25日、臨時理事会を開き、大の里の大関昇進を満場一致で決めた。二所ノ関部屋で行われた伝達式で、大の里は「唯一無二の力士を目指す」と力強く口上。会見では「ここで終わりではない。『上へ上へ』と頑張る」と、師匠以来となる日本出身横綱への意欲も示した。同席した二所ノ関親方は「相撲の常識を崩してほしい」と期待を寄せた。 大躍進の1年になったが、新大関最初の九州場所は9勝止まりで優勝争いには絡めなかった。「最後は悔しい結果になった。来年も飛躍できるように頑張る」と巻き返しを期す。
茨城新聞社