JR九州高速船、浸水隠しの原因を分析・公表 「安全推進部」を新設
JR九州の子会社「JR九州高速船」が日韓を結ぶ旅客船「クイーンビートル」の浸水を隠して運航し続けた問題で、JR九州高速船は31日、国土交通省から受けた行政処分に対する改善報告書を国交省に提出し、後任の安全統括管理者と運航管理者を届け出た。 【写真】JR九州高速船「クイーンビートル」 JR九州高速船は提出に合わせ、浸水隠しの原因を分析・公表。前社長が船員経験の長い各管理者から「安全に支障はない」との説明や「(国に)報告すれば運航停止が必至」との意見を聞いて運航継続を認めたことや、安全統括管理者が企画部長を兼務し安全の統括業務に専念しにくい環境があったなどとした。 再発防止策では、安全意識や法令を守る意識の浸透や安全管理体制の機能強化など5項目に取り組む。後任の安全統括管理者には、JR九州で鉄道の安全に携わった現JR九州高速船副社長の松尾英典氏(57)、運航管理者に船長経験があるJR九州高速船OBで10月に再雇用された原田浩一氏(69)を充てた。JR九州高速船社内には「安全推進部」を新設。社員の行動規範となる「安全の綱領」を定め、安全に関するアドバイザーを社外から招く。監査などJR九州の関与を強める。 報告書提出後に記者会見したJR九州の古宮洋二社長は「定められていることをきっちり守ることが安全の近道。それを徹底させたい」と述べ、運航再開は未定とした。JR九州高速船の大羽健司社長は「安全推進部を設け、安全に関する業務推進状況についてきちんと確認したい」と話した。 JR九州高速船では、2月に浸水を確認したものの必要な報告や検査をせず約3カ月運航していたことが国交省の抜き打ち監査で発覚。9月に国交省から輸送の安全確保命令と、安全統括管理者・運航管理者の解任命令を受け、31日が報告書提出の期限だった。 浸水隠し問題を巡ってはJR九州が設置した第三者委員会の報告書が11月中にも示される見通し。一方、福岡海上保安部は船舶安全法違反(臨時検査不受検航行)と海上運送法違反(安全管理規定違反)の容疑でJR九州高速船の捜査をしている。【下原知広、栗栖由喜】