比嘉愛未が『作りたい女と食べたい女』から受け取ったこと。「傷ついたりストレスを抱えたりする人が少しでもいなくなった方がいい」
悩みや葛藤により焦点が当てられるシーズン2。「より深く物語が動いている」
―前作は野本さんが春日さんへの恋心に気づくところで終わりましたが、シーズン2では、2人の関係がより発展していきます。前回と続編はどんなところに違いがありますか? 比嘉:基本的な穏やかさとかあたたかさ、優しい空気感は変わらないんですが、まず内容がとてもディープになりました。 前回は美味しいものを食べて、自分らしく人と比べずに生きる大切さを伝えることを大事にしていたと思うんですが、シーズン2では矢子さんと南雲さんという新しい登場人物も出てきて、それぞれが持っている悩みや葛藤、抱えている生きづらさというものがさらにクローズアップされています。会話の内容に、より考えさせられる部分が増えて、演じる側としては会話のキャッチボールが難しくなったと思います。 でも、そういった会話は決して一方的な押し付けではなく、自然な会話のなかでキーワードとしてちりばめられています。些細な会話とかやりとりのなかで気づいたり、反省したり、相手に向き合ってみたりという葛藤や喜びがすごく丁寧に描かれていると思います。 同じように悩んでいたりモヤモヤしていたりする人たちがその言葉を聞いたとき、肩の荷が下りるというか、何か解決する一つのヒントみたいなものを見つけられるんじゃないかなと台本を読んで思いました。 原作がもともと持っている力に、山田由梨さんの脚本やプロデューサー、演出の方々みんなの思いが連なっていて、より深く、違うかたちで物語が動き出しているというか、成長している感じがします。
背中をポンと押すことができるのは、人の愛情や思いやり
―矢子さん(ともさかりえ)は野本さんがSNSで出会うレズビアンでアセクシュアルの女性で、南雲さん(櫻坂46・藤吉夏鈴)は人前で食べることに怖さを感じる会食恐怖症に苦しんでいるキャラクターです。原作では、野本さんが春日さんとこの2人と出会って、それぞれを尊重しながら支え合っていく関係性がすごく素敵ですよね。 比嘉:そうなんです。登場人物たちはすごく愛おしいですよね。現実でも大変な思いをしながらみんな生きていると思うんですが、「大変なのは自分だけだ」と思ってしまったら、どんどん追い詰められてしまうと思います。近くにいる人と「こんなことがあってさ」「そっかあなたも大変なんだね。わかるよ、頑張ろうね」って少し話せるだけでもきっとすごく楽になると思うんです。 その感覚に近しいものがこの作品にあるような気がしています。「大丈夫だよ」なんて言葉は簡単には言えないけど、大変なのは自分だけじゃないよというか、すごく寄り添って、気持ちを少しでも楽にさせる力がありますよね。 比嘉:いつも思うのですが、生きていくうえでエンターテイメントはどんな人にとっても絶対に必要なものかというと、必ずしもそうではないと思うんです。いまも能登半島で震災があって、そういうときに一目散に駆けつけて何かできるかと言ったら、何もできないと思うんです。 でも、最終的に生きる希望とか、背中をポンって押すことができるのは、やっぱり人の愛情や思いやりな気がしています。何かできることがあるとしたら、作品を通してそれを少しでもギブできたらという気持ちがあります。いまの時代はみんな生きていくだけでも大変だと思うのですが、このドラマはそこに寄り添ってくれることがすごく魅力的だと私は思っています。