【トリビュート】稀代の天才カーデザイナー マルチェロ ガンディーニを偲ぶ
巨匠マルチェロ ガンディーニ(Marcello Gandini)が3月13日に天国へと旅立った。
自身の所有した車の中で、圧倒的にスタイリッシュで魅力的だったのは「シトロエンBX」である、と信じて疑わないガンディーニ信奉者の大林晃平が、ガンディーニのことをあらためて想う。
ガンディーニと言えばカウンタックやミウラという派手な自動車がクローズアップされるが、生前の彼は実に物静かで控えめなジェントルマンであったことが知られている。彼にインタビューした者は「これほど記事を作りにくい者はいない」と口をそろえて言っている。それほど彼の語りは静かで、サービス精神で人を笑わしたり、喜ばせたりするような発言はまるでないまま、淡々と穏やかに語ったという意味だが、彼の生活自身も実にアンダーステートメントで、トリノの街の中からやや離れたもと修道院に、静かに暮らしていたという。そんな彼の日常の足クルマが「ワゴンR」であったというのは有名だ。
マルチェロガンディーニは1938年8月26日にトリノに生まれたが、オーケストラの指揮者であった彼の父はマルチェロをピアニストの道に進ませたかったというが、本人は高校一年の時に父からラテン語の翻訳本を買うように、と渡されたお金でダンテジアコーザの内燃機関に関する本を購入し、穴が開くほど読んだのだという。結局その後ガンディーニは父の希望とは全く異なる道を歩み、幼稚園の備品やナイトクラブの内装などを手掛ける仕事に就いた後、27歳の時からベルトーネにおいてデザイナーとして活躍し始める。 この際に、自動車好きの話のネタになりがちなのは、彼のベルトーネでの最初の仕事であった「ランボルギーニ ミウラ」は、いったいジュージアーロがデザインしたものなのか、ガンディーニがデザインしたのか、いったいどっちなんだ問題なのだが、真相はジュージアーロの仕事を引き継ぐ形でマルチェロ ガンディーニがデザインを行ったというのが正解らしい。その後もガンディーニは「ランボルギーニ エスパーダ」、「ランボルギーニ ウラッコ」、「アルファロメオ モントリオール」、「ランチア ストラトス」、「フィアットX1/9」、「フェラーリ ディーノGT4」などを手掛けた。