日本経済総予測2025 迫る大阪万博 「たのしみ」を期待しない 日本の「これから」を探る場になれば 佐滝剛弘
逆に言えば、楽しければ良いとか、お気に入りの写真さえ撮れれば良いという風潮に染まりがちな私たちに、万博は「イベントリテラシー」ともいうべきものを突きつけているのかもしれない。単に楽しみたければ、万博会場の近くにあるテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)の方が、はるかに私たちを夢の世界にいざなってくれるだろう。 日本は今、いくつかの指標が示すように先進国の座から滑り落ちつつあるともいえる。だとすれば、先進国たるゆえんだったモノづくりの優位性や大量生産に合わせた社会の仕組みを変えていくのか、それとも復権を目指すのか、そんな分かれ道にあることを自覚し、今後のヒントを万博の中に探しに行くことができるのではないか。 インバウンド(訪日外国人)の日本への貢献を「富裕層がいくら使ったか」だけで測るように、「経済」を金額や成長率などの数字だけで捉えるのではなく、その本当の価値を見いだし、昇華させる姿勢こそが私たちに問われている。そのリトマス試験紙が万博への向き合い方なのかもしれない。 (佐滝剛弘〈さたき・よしひろ〉城西国際大学教授)