「スター・ウォーズ」のデイジー・リドリーが公表したバセドウ病の症状とは? 検査・治療法も解説
バセドウ病の原因
編集部: バセドウ病の原因はどのようなものですか? 武井先生: 通常甲状腺ホルモンは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺の細胞表面にあるTSH受容体と結合することで甲状腺を刺激した結果として分泌されます。 バセドウ病で起きる甲状腺ホルモンの過剰分泌は、TSHではなく、TSH受容体抗体がTSH受容体に結合し、甲状腺を過剰刺激することによって、起こります。 このTSH受容体抗体の産生メカニズムは不明ですが、遺伝や体質的な要因に加えて、過度なストレス、過労、重篤な感染症、妊娠、出産などを契機として発症することが多いとされています。
バセドウ病の検査・診断
編集部: バセドウ病の検査・診断はどのようなものですか? 武井先生: バセドウ病は、血液検査、超音波検査、アイソトープ検査により診断します。 編集部: 血液検査はどのようなものですか? 武井先生: バセドウ病の診断を行うために、血液検査により甲状腺ホルモン値、TSH値、TSH受容体抗体の有無を血液検査により測定します。また、全身状態の評価を行うことを目的に一般的な血液検査項目を測定します。 編集部: 超音波検査とはどのようなものですか? 武井先生: 超音波検査によって、甲状腺の大きさ、しこり、血流などを確認します。 編集部: アイソトープ検査とはどのようなものですか? 武井先生: 甲状腺は、ヨウ素やテクネチウムといった放射線放出物質を取り込みやすい臓器です。この性質を利用して、ヨウ素やテクネチウム薬剤の服用により、甲状腺に取り込まれる量を測定することで、甲状腺機能の問題の有無を調べます。
バセドウ病の治療方法
編集部: バセドウ病の治療をする場合、どのような治療方法がありますか? 武井先生: 薬物(抗甲状腺薬)治療、放射性ヨウ素内用療法、手術の3つの治療法があります。どの治療にも利点と欠点がありますので、治療法の選択には主治医との十分な相談が必要です。 「薬物療法」 抗甲状腺薬を内服することで、甲状腺ホルモンの合成と分泌を減らすことを目的とした治療法です。 約2か月程度の服用で、甲状腺ホルモンが基準値内となれば徐々に内服量を減らし、内服量を再少量に減量しても甲状腺ホルモンが基準値内にあれば、内服中止を検討します。 服薬期間は通常2年間程度となりますが、内服薬の服薬終了後に再発してしまう場合が多く見られます。2年以上の薬物療法で薬を中止できない状態が続く場合は、他の治療法を検討します。 薬物療法の利点は、薬の内服だけという利便性にありますので、治療の第一選択となります。欠点は、約0.5%の方に無顆粒球症が発症することです。 無顆粒球症は、白血球がほとんど無くなるため、重大な細菌感染のリスクがあります。また、約3%の方で肝機能障害や蕁麻疹を生じます。そのため、内服開始後約2か月間は2週間に1回の血液検査が必要となります。 「放射性ヨウ素内用療法」 甲状腺は体内のヨードを使い甲状腺ホルモンを産生する臓器ですので、甲状腺にヨードが集積しますが、その他の臓器はヨードを取り込まず尿や便として排泄します。 この性質を利用し、ヨードに少量の放射線を付けたカプセルを服用すると甲状腺にそのヨードが集積し、甲状腺だけが被爆した状態になりバセドウ病を治療することができます。 放射性ヨウ素内用療法の利点は、1度のカプセルの内服で短期間に治療ができるため、内服薬による治療より治療期間が短く、外科治療のような傷あとが残らないことです。欠点として甲状腺を破壊してしまうため、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になります。 また、放射性ヨード治療後6か月間の避妊が推奨されるほか、18歳未満の患者には禁忌とされています。 「甲状腺摘除術」 外科手術を行い、甲状腺を摘出します。甲状腺摘除術の利点は、早く、確実な治療効果が有ることです。欠点は、入院が必要であること、手術痕が残ること、手術の合併症として、反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症が発生する場合があることです。 バセドウ病は未治療の状態が長期間続くと心房細動や心不全、骨折などのリスクが高まりますので、上記のいずれかの治療が必要となります。どの治療法を選択するかは、個人差がありますので、主治医との相談が必要です。