「最新の生成AI」はすでに人類の半数以上よりアタマが良い…落合陽一「今後、人類の働き方は大きく変わる」
■ChatGPTの25倍の速さで回答するGroq ただ、これからずっとClaude3が生成AIのトップを走ると判断するのは早計です。なぜなら、生成AIは驚くほどのスピードで進化しているからです。2022年11月に登場したGPT-3.5のMMLU上でのスコアは70%でした。それからたった1年半の間で、Claude3が86.8%というスコアを獲得したことからも、生成AIの進化のスピード感がよくわかるのではないでしょうか。 一時的にはClaude3が性能面でトップに躍り出ましたが、現在はどの生成AIが覇者になるかが全く読めない、戦国時代へと突入しています。 さまざまな生成AIが日々誕生していますが、その得意ジャンルも多様です。たとえば、回答の速さで注目されるのが、カルフォルニア発の半導体スタートアップであるGroqが提供する生成AI「Groq」です。 この生成AIは、大規模言語モデル(LLM)を高速化し、1秒間でほぼ500トークンに近い回答生成を可能にしました。GPT-4のトークン数は1秒間20トークン前後だと言われるので、比較するとGroqはGPT-4の25倍ほど、回答が早いことがわかります。これだけレスポンスが早いと、大量のデータを処理したいときや即座に情報を得たいとき、Groqを有効活用する人も増えるはずです。 ■高速スピードの秘密は半導体チップ なぜGroqが生成AIの中でスピードに関して抜群の優位性を保っているのでしょうか? その理由は使用しているチップにあります。Groqに使われているのは、自社で開発したLPU(Language Processing Unit)というAI処理専用のチップです。 現在、ChatGPTなど多くの生成AIに使われているのは、画像生成などが得意なGPU(Graphics Processing Unit)というチップです。 一方、LPUは、大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)の処理に特化しており、GPUよりもコードや自然言語などの一連のデータの処理を高速で行うことができます。だからこそ、Groqは、ほかの生成AIを圧倒する高速化を可能にしているのです。 今後、LLMを基盤とする生成AIにおいて、GroqのようにGPUではなくLPUの使用が一般的になれば、より高速な生成AIが続々と誕生する可能性もあります。 ---------- 落合 陽一(おちあい・よういち) 筑波大学准教授、メディアアーティスト 筑波大学でメディア芸術を学び、2015年東京大学大学院学際情報学府にて博士(学際情報学)取得。現在、メディアアーティスト・筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター長/図書館情報メディア系准教授・ピクシーダストテクノロジーズ(株)CEO。応用物理、計算機科学を専門とし、研究論文は難関国際会議Siggraphなどに複数採択される。令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰、若手科学者賞を受賞。内閣府、厚労省、経産省の委員、2025年大阪・関西万博のプロデューサーとして活躍中。計算機と自然の融合を目指すデジタルネイチャー(計算機自然)を提唱し、コンピュータと非コンピュータリソースが親和することで再構築される新しい自然環境の実現や社会実装に向けた技術開発などに貢献することを目指す。 ----------
筑波大学准教授、メディアアーティスト 落合 陽一