県通知「年末までに退去を」 みなし仮設「半壊未満」の入居者に 修理予定も業者おらず、猶予望む声
●県、時期明示で「一緒に考える」 能登半島地震後に「みなし仮設住宅」で暮らす被災者に、石川県が退去の目安時期を伝えていたことが24日、関係者への取材で分かった。自宅が半壊未満で入居している人に対し、文書で実施した意向調査で、年末までに退去するよう促している。県は「時期を明示することで退去後の暮らしを一緒に考える機会にしたい」と説明するが、被災者からは「もう少し時間の猶予はないのか」と不満の声が漏れている。 みなし仮設住宅はアパートなど民間賃貸住宅を仮設住宅とみなして、家賃を自治体が負担する仕組み。自宅が半壊以上の被害を受けた場合は原則2年間、自宅がある地域で水道などのライフラインが使えなくなっている人は復旧までを入居の期間としている。2次災害の恐れがある人も対象とする。 文書は7月上旬、「ライフライン復旧に伴う住まいの意向確認」と題して送付された。被災地のライフラインが9月末に復旧する見通しとなったためで、被災した自宅が持ち家か借家なのかや、建物の被害区分を尋ねる内容となっている。 退去の目安時期が記されているのは、自宅が半壊未満だったケースだ。 修理を望む場合、「自宅の修理が完了するまで、入居できる」との文章に加え、「12月末までを目標に自宅の修理を完了させ、修理完了後は速やかにみなし仮設住宅から退去できるよう可能な限り努めてください」と記載している。 また、自宅を修理しない場合は「ライフラインの復旧に伴い、10月1日以降はみなし仮設住宅から速やかに退去する必要がある」と記している。 文書で時期が示されたことを受け、みなし仮設で暮らす被災者からは「住宅を直したくとも、大工が見つからない。年末なんてとても間に合わない」などと不満の声が上がる。 輪島市から集団避難し、両親や子どもと県南部のみなし仮設住宅で暮らす50代の男性はこれまでの県の対応に感謝しながらも、自宅が半壊未満のため、先行きへの不安が拭えない。男性は地元に戻るかどうか「今の時点では考えられない」とした上で「故郷の集落は、ライフラインの復旧が他よりも遅い。もう少し期限を延ばすことはできないのか」と話す。 県土木部の担当者は、被災者一人一人が住宅についてどう考えているのかを把握するのが文書送付の目的とし「修復の見通しが立たない場合には、きちんと対策をとる」と説明。「『早く出て行ってほしい』との考えは全くない。どうすれば、被災者が地元に戻れるのかを一緒に考えていきたい」と話した。 ●「制度は柔軟に」被災者目線で 日弁連災害復興支援委・永野海副委員長 日弁連災害復興支援委員会副委員長で被災者支援に詳しい永野海弁護士(静岡県弁護士会所属)は、「住民の命を守るため、半壊未満であっても、危険性がある場合には、制度を柔軟に運用すべきだ」と指摘する。 能登半島地震では、建物の被害実態と罹災証明の判定が合っていないケースが散見されるとし「市町には、2次調査や再調査による判定の再検討を、被災者の目線に立って行ってほしい」と訴えた。 ★みなし仮設住宅 災害救助法に基づき、被災者に対し、民間賃貸住宅を活用して賃貸型の応急住宅を供与する制度。今回の地震では、野々市市と川北町を除く17市町の住民が対象となる。世帯人数により家賃の上限がある。県によると、県内外で約3800世帯がみなし仮設で暮らしている。