【犬の鼻血】甘く見ずにすぐに動物病院へ「悪性腫瘍の可能性も」獣医師が解説する
腫瘍の次に多いのが鼻炎
犬の鼻血で、鼻腔内腫瘍に次いで多いのが、鼻炎だ。鼻腔内の粘膜に炎症が起きた状態を鼻炎と呼ぶ。鼻炎はウイルスや細菌、真菌(カビ)などの感染症によって発生したり、口腔内の疾患に続いて発生したりする。アレルギーが原因のこともある。 「鼻血で私たちのグループの病院を受診した犬の30%程度が鼻炎ですね。カビや細菌の感染によることが多いように思いますが、原因がさまざまなので、まず特定してから、原因に合わせて治療します。症状が軽ければ抗生剤や消炎剤などで、数日ほどでよくなることもあります。一方で、慢性化して長引いてしまうこともありますね」
鼻炎予防というより感染症予防をしっかりと
鼻炎は、チワワやミニチュア・ダックスフントでほかの犬種よりやや多いというデータがあるものの、犬種や性別などによる偏りは基本的に少ない。年間で、鼻炎のために病院にかかる犬は200頭に1頭ほどと全体の発生率も高くない。ただ、怖い病気につながる可能性が気になるところだ。鼻腔内に腫瘍ができたために炎症が現れることがあるというが、逆に、鼻炎から鼻腔内腫瘍に進んでしまうようなことはないのだろうか。 「そういった報告はありません。鼻炎と診断された後に同じ場所に腫瘍が見つかることはありますが、もともと腫瘍から来る炎症だったのか、炎症が腫瘍を引き起こしたのか判別することはできないので……」 それでも、予防はおこたらないでほしいと鳥海さんは話す。 「鼻炎の原因にもなるカビや細菌の感染症には皮膚糸状菌症やレプトスピラ症など、人間に感染するものもありますし、どんな病気でも犬のQOLを低下させることは間違いないので、できるだけ予防はしましょう。犬はニオイで人や物や場所を認識しようとするので、鼻をあちこちに突っ込んだり近づけたりします。鼻先が汚れやすいので、鼻周りを清潔に保ってあげてください」 散歩から帰ったら、顔周りをタオルで拭いてあげたり、住環境を清潔に保ったりすると、ある程度、予防効果が期待できるという。 ◆教えてくれたのは:獣医師・鳥海早紀さん 獣医師。山口大学卒業(獣医解剖学研究室)。一般診療で経験を積み、院長も経験。現在は獣医麻酔科担当としてアニコムグループの動物病院で手術麻酔を担当している。 取材・文/赤坂麻実