「まさか北京でも…」襲撃はトップレベル校の門近く、中国で相次ぐ子ども切り付け
【北京・伊藤完司】中国で子どもを襲撃する事件が相次ぐ中、28日には北京市海淀区の小学校近くでも切り付け事件が起きた。地元メディアなどによると、被害者5人のうち3人は小学生で、現場近くの小学校を解雇された警備員が逆恨みして事件を起こしたとの情報もある。首都・北京は、他の都市と比べて警備体制が格段に厳しく、「まさか北京でも…」との動揺が広がっている。中国政府は、社会への不満をきっかけに、弱い子どもを狙う類似の事件が広がることに神経をとがらせている。 【写真】現場付近を警戒する北京の警察官ら 事件翌日の29日、現場となった小学校周辺は警察車両が並び、警察官らが警備していた。同区は北京大や清華大など名門大学がある文教地区。現場は、北京でも「トップレベル」とされる小学校の校門近くだ。 近所に住む高齢の女性は「北京でこんな事件は何年も聞いたことがない。この地区で起きるとは…」と戸惑いを隠せなかった。地元住民が集うアプリのグループチャットには「親が必ず子どもを迎えに行くしかない」と、動揺する投稿が相次いだという。 事件発生は下校時間の午後3時20分ごろ。中国メディアは、校門付近に多くの児童がおり、突然現れた男がナイフで子どもたちを切り付け、「けがをした子どもはすべて小学校の高学年だった」と伝えた。インターネット上には事件直後の現場とする映像が投稿され、子どもが路上に倒れている様子が写っていた。 現場近くの商店で働く女性は「関係者から小学校の警備員を解雇された男性が事件を起こしたと聞いた」と話した。香港メディアも同様の情報を伝えている。容疑者は50歳の男という。 中国では子どもを狙った事件が相次ぎ、今月8日に広東省広州、22日に浙江省寧波で登校中の児童や保護者らが襲われて負傷。6月に江蘇省蘇州、9月に広東省深圳で起きた事件では、日本人学校に通う男児らが死傷した。 容疑者はいずれも40~60代の男で、刃物を使って主に子どもを狙う手口は共通する。中国当局は詳しい動機を明らかにしていないが、一部の容疑者が無職だったり前科があったりした。 中国では「深刻な不況で雇用情勢が悪化し、社会に不満がたまっている」と多くの関係者が指摘する。現場近くに住む女性は「罪もない子どもが被害に遭うなんて、絶対にあってはならない」と憤っていた。