世界を席巻する「K-POP・韓ドラ」の他国にはない「独自の特徴」とは?...BTSからイカゲームまで
葛藤も変化もエネルギーに
韓国のエンタメが世界中の何十億という人々に前例がないほど広まっていることは、19世紀に西洋人の間で「隠者の王国」と呼ばれた孤立主義的な王朝の遺産を持つこの国が、途方もなく世界に露出しているということでもある。 そのプロセスは、最新テクノロジーに執着する国民性によって加速している。韓国はインターネット利用者、スマートフォン所有者、SNS利用者の割合が世界でもトップレベルに高い。 韓国の勝利の戦略において伝統が重要な要素であるなら、外部の文化へのアクセスが氾濫することはリスクにもなり得る。 「韓国では、特に若い世代を中心に、外国の文化を高く評価している」と、柳は言う。 「ジャズ、コカ・コーラ、ハリウッド、ビデオゲームなどのアメリカ文化に引かれる人が多い。そうしたコンテンツや異文化は相互に交流し、影響を与え合っている。そのように影響を与え、影響を受けている文化もまた、進化して、変化していく。韓国では日常の生活様式も大きく変化してきた」 一方で変わらないものもあると、柳は確信している。 「孝や義など、基本的な文化的概念の一部は変わらない。韓国は家族中心の社会だからだ。親は子供のために犠牲を払うものとされ、だから子供は親に孝行する。つまり、文化の根底にある流れは同じだ。それをさまざまな方法で表現するようになっただけだ。韓国が伝統文化を失うのではないか、弱めるのではないかと心配する人もいるだろう。しかし、そういう不安はいつの時代にもあるものだ。人々はいつも心配して、それに慣れ、順応しながら文化を守ってきた」 韓国文化は現代の発展や異文化交流の目まぐるしいスピードに合わせて進化しているが、韓国社会の中では大きな溝が生じている。重要な問題をめぐり、男女間、世代間、保守派や進歩派、その他のグループなどの間で亀裂が広がっているのだ。 しかし、これについても柳は、この「熱い」国が不利な状況を取り込んで、より広い意味での前進につなげる機会だと考える。 外から見れば常に何かしら問題を抱えているかもしれないものの、葛藤を経験しながら、その影響を受けて落ち込むのではなく、立ち上がり、発展と進歩の足がかりにするのだという。 「韓国ほど多くの変化を経験してきた国はほとんどない」と、柳は指摘する。冷戦の勃発は朝鮮半島を分断しただけでなく、100万人以上の命を奪った壊滅的な戦争をもたらし、ソウルを含む多くの都市を破壊した。 現在の活気あふれる摩天楼の姿は、当時のソウルからは想像もつかない。今や世界で最も安全な都市の1つとして頻繁にランキングされてもいる。 北朝鮮のミサイルが上空を飛ぼうが、街頭で抗議デモが起ころうが「人々の生活は続いている」と、柳は言う。 「実際、この国は数え切れないほど衝突を経験しながら、国として発展してきた。それが韓国文化の根源的な力であり、原動力だ」