人口減退期は“終着駅”ではない…今回の減少で日本はどんな新文明に移るのか
2015年12月に開催されたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)では、産業革命前からの地球の平均気温の上昇を、摂氏2度未満、できるなら1.5度未満に抑えることと、それを実現するために温室効果ガスの排出量を今世紀後半にゼロにすることなどを目指すパリ協定が採択された。世界は明らかに、再生可能エネルギー資源をベースとする次世代文明の実現に舵を切った。産業文明は、確実に人類に豊かさをもたらした。しかし化石燃料に依存する限り、いずれ成長の限界、あるいは豊かさの持続すら不可能にすることもまた、歴史の必然である。 仮にエネルギー資源の大半を自然力である再生可能エネルギーに依存するとなれば、それは都市、工場、人口の配置にも影響してくるだろう。広く薄く、分散的に存在するエネルギー源を効率よく利用しようとするならば、エネルギーの供給地と需要者がなるべく近いところにあったほうがいい。ICT(情報通信技術)の発展も経済や人口の分散を可能にさせるだろう。 そうなると分散的な国土利用が進むのではないだろうか。バイオマス(森林)の活用を提案する「里山資本主義」のようなアイデアがある。また山形県南部の置賜自給圏推進機構のように、エネルギーと食糧の地産地消を目指す地域をつくる試みが始まっている。中央集権的な国家間の「国際」関係ではなく、多様な地域が連携し、それぞれの地域が海外の地域と互いに支えあうような地域外交によるグローバル社会が生まれる可能性がある。 人口減少に逆らうことは難しい。たとえ出生率が回復するとしても、人口減少が止まるのは21世紀も末期になるだろう。それなら人口減少に適応し、あるいはそれを逆手にとった、新しい価値の創造をめざすべきだろう。人の一生、家族のかたち、地域のありかた、国家のかたち、エネルギー、豊かさの内容など、人と人のつくり出した様々なものとの新しい関係、そして地球=環境との新しい関係の構築が模索されているのである。人口の圧力が弱まったいまこそ、その好機なのではないだろうか。出生率回復ありき、ではない。人口減少社会に適応することで豊かな生活を実現し、さらに未来のくらしのかたちがほのかに見えてくるようになれば、出生率も自然に回復するのではないだろうか。