【音羽山親方・春場所総括】新入幕優勝の尊富士は「自分が“勝負師”であることを意識している」 新大関・琴ノ若は「合格点」
脚に爆弾を抱えているリスクも
――尊富士関のよさを、親方はどう分析していますか? 音羽山:やはり、立ち合いからの速攻相撲ですよね。相手力士と当たったあと、普通は上体が上がったり、のけぞったり、多少は体勢がブレるものなのですが、尊富士は上半身の力があるからブレない。そして、常に自分から攻めているところでしょう。また、勝っても負けても表情を変えないところもいいと思います。自分が「勝負師」であることを意識している証拠です。 青森県五所川原市出身の彼は、小さい頃から熱心に相撲に取り組んでいました。左を差しての速攻相撲は、高校生の頃から変わらないスタイルです。大相撲に入門後、体は大きくなりましたが、ヒザ下が細い体型も変わっていません。 足首の細さは瞬発力の高さを示し、贅肉がない分、早く動けるという利点もありますが、14日目の朝乃山戦で見せたように、脚に爆弾を抱えているリスクもあります。今は前に前に攻めていますが、逆に相手から押されて圧力を受けた時、その圧力にどれだけ耐えられるか……。 いずれにせよ、来場所以降、尊富士の相撲から目が離せません。
春場所開始まで多忙だった琴ノ若
――新大関として、初優勝も期待された琴ノ若関に関してはいかがですか? 音羽山:初場所はいろいろな重圧の中、一発で大関昇進を決めて、その後、春場所が始まるまでは毎日のように挨拶まわりやイベントで忙しかったようなんですね。 私も経験がありますが、新大関としての大舞台を控えて、なかなか気が休まらないものなんですよ。そんな中、2ケタ、10勝を挙げたことは、私としては、合格点じゃないかと思います。 そして、琴ノ若は5月の夏場所から、おじいさん(先代・佐渡ヶ嶽親方=元横綱・琴櫻)の四股名「琴櫻」を名乗ることも正式に決まりました。祖父、父、息子の三代で強い力士として活躍をすることも珍しいですが、おじいさん、お父さんの流れがあっての「琴櫻」。大相撲界ならではというか、日本人ならずとも、心にグッとくる襲名だと思います。