【能登半島地震5カ月】自宅の解体を決めた人・液状化対策を望む人…生活取り戻すための“決断と模索”【新潟発】
能登半島地震から6月1日で5カ月。液状化などにより1万7000棟以上の住宅に被害が出た新潟市では自宅の解体を決めた人、抜本的な液状化対策を望む人…、次のステップに向けた動きも見られている。 【画像】“大規模半壊”の判定受け自宅の解体を決断「自分で建てた家だけど…仕方ない」
自宅の解体を決断 新生活に不安も…
新潟市中央区女池の佐藤和義さん(85)。引っ越しを前日に控えた自宅の玄関には、ダンボールが積まれていた。 「相当物を捨てた。この年になって、本当は何もしたくないんだけど」とため息を漏らす。 自身が45年前に建て、子ども3人を育てた自宅は能登半島地震で液状化被害を受けた。 地震直後は傾く自宅に不便を感じながらも「何とか住むことはできる」と話していたが、新潟市から“大規模半壊”という判定を受け、公費での解体を申し込んだという。 庭仕事を趣味とし、地元の名前が付いた菜っ葉である「女池菜」を育てるなどしていた。 実が成るのを楽しみにしていたキウイや柿の木も解体作業の邪魔になるからと処分した。 「新しい家にも庭はあるけれど、日陰だからだめだ」と残念がる佐藤さん。 今後は県の支援制度を活用し、賃貸住宅に移るため、「知らない町内に行く」という不安もよぎる。 支援を受け、賃貸住宅で暮らせる期限は2年。その間に子どもたちと話し合い、この土地での家の再建も視野に今後について考えるという。 「せっかく自分でつくった家を被災したものだから解体は残念。でも、仕方ない」 45年の暮らしを手放すさみしさが、ひと言ひと言ににじむ。
公費解体始まるも完了は見通せず
新潟市は5月11日までに、公費解体への申請を381件受け付けていて、5月20日から徐々に作業が始まっている。 中原八一市長は「自宅をそのままにしていたのでは気持ちの整理がつかないと思う。生活再建に向け、できるだけ早く解体をして差し上げることが最善」と述べており、市は月100件の解体を目指している。 一方で、市は工事業者から「そのペースでの作業は難しい」との指摘を受けているといい、公費解体の完了は見通せていない。