バイデンとトランプが宣誓に使った聖書は「別物」だった…アメリカ社会「分断」の根底にある“ふたつの聖書”
もともとは聖書にある福音書を忠実に守り行動する人たちです。「福音」とはキリストの言葉で、キリストの弟子たちがキリストの生と死、復活までの言動を福音書にまとめました。 聖書に書かれていることを忠実に解釈するという傾向がある中で、極端になっているグループがアメリカでいうキリスト教福音派と呼ばれる人たちです。この人たちはトランプさんを支持し、人工妊娠中絶に反対し、同性婚を絶対に認めません。 このような南部、バイブルベルトにいる「原理主義者」の政治宗教グループを指して、アメリカでは「福音派」といいます。
トランプさんは母親がスコットランド系の長老派です。カルヴァン派はフランスに生まれたカルヴァンが源流で、それが、16、17世紀にスコットランドに伝播しました。そして、そのスコットランド系のアメリカ移民たちに広まったのがカルヴァン派の長老派です。 アメリカでは大統領に就任するときに、聖書に手を置いて宣誓します。トランプさんが使った聖書はリンカン大統領が使った聖書のレプリカです。本物は貴重過ぎて持ち出せないのでレプリカでした。
そのレプリカの上に、母親のカルヴァン派の長老派の聖書を置き、そこに手を置いて宣誓式を行いました。だから、彼自身はカルヴァン派の長老派であるとオフィシャルに見なされています。 だからといって、トランプさんが敬虔な信者ではあるかどうかは議論の余地がありますが、彼を支持しているキリスト教福音派の人たちは、そのように見ています。 福音派の人たちの話では、トランプさんは常に聖書を持っていて、演説をするときなどは、聖書のここにはこう書かれていると、そして、これはお母さんから引き継いだもので、カルヴァン派の長老派の聖書であると話すそうです。
■カトリックとプロテスタントは使う聖書が違う ――今年の4月にトランプは「God Bless The USA Bible」というトランプ版バイブルを出して、バイデンと宗教対立をあおっているという見方がありましたが、どのようにお考えでしょうか? 松本氏 バイデンさんとトランプさんとは聖書が違います。バイデンさんはカトリックです。カトリックは旧約聖書と新約聖書を教典としています。彼はアイルランド系の移民の子孫です。