波立つ南シナ海…中距離ミサイル計画で応酬激化 中国本土も射程に?
南シナ海で領有権を争うフィリピンと中国の間に、新たな火種が浮上している。フィリピン軍が米国製中距離ミサイル発射装置の取得計画を発表。搭載するミサイルによっては中国本土まで射程に入るため、中国は強く反発している。 【写真】中国製水中ドローンを回収か フィリピン沖で発見、比海軍が調査開始 「陸軍も排他的経済水域(EEZ)まで戦力行使できるようになる」。フィリピン陸軍のガリド司令官は昨年12月23日、地上発射型の中距離ミサイル発射装置「タイフォン」の取得を計画していると明らかにした。 EEZの防衛を目的に昨年始まった包括的群島防衛構想に基づく能力強化の一環だとし、予算の確保を急ぐ方針を示した。取得数については明言しなかった。 タイフォンについては、米軍が同年4月、米比の定例合同軍事演習に合わせ、フィリピン北部に一時配備したと発表していた。米ロ間で中距離ミサイルの保有を禁じた「中距離核戦力(INF)全廃条約」が19年に失効して初の配備例で、演習後も配備を継続している。 演習に合わせた配備が明らかになった当初から、中国の反発は強い。理由の一つは、その射程範囲だ。迎撃ミサイル「SM6」や巡航ミサイル「トマホーク」が搭載可能で、フィリピン北部からだと台湾周辺や中国本土も射程に入る。中国が実効支配するスカボロー礁など、南シナ海の複数の島礁も圏内だ。
朝日新聞社