希死念慮に苦しんだ作家・土門蘭がサンリオに救われた理由 「他人が関与しない、自分だけの幸せ」を探して
レジでお金を払ったときの解放感
後日、サンリオショップへ足を運んでみた。周りからは子供へのプレゼントを選んでいるように見えたかもしれないが、私は私へのプレゼントを真剣に探していた。 初めはかなりちゅうちょした。生活に必要なわけでも、誰かに褒められるわけでもない物を買うのに罪悪感があった。でも「自分だけの幸せ」を見つけるトレーニングを続けてきた私には、それを振り切る強さも備わっていた。誰にも認められなくていい。自分が心から美しいと思うものを、一人で愛でる時間が欲しい。 私は自分の心の赴くままに商品を手に取った。ハローキティのガーリーなアクリルキーホルダーに、リトルツインスターズのピンクのノート。マイメロディのキラキラ光るシール。両手でそんな愛らしい物たちを包むと、心が温められ癒やされるようだった。私は大事にそれらを抱えて、レジで自分のためにお金を払った。その時の解放感は忘れられない。 以来、時々サンリオショップに足を運んでいる。ここで買い物をする時、私は純粋に一人だと感じる。他人の目ではなく、ただ自分の心に委ねる時間。そうして選んだ物たちは、今も私を勇気づけ満たしてくれる。 土門 蘭(どもん・らん) 1985年広島県生まれ。小説・短歌などの文芸作品や、インタビュー記事の執筆を行う。主な著書に『死ぬまで生きる日記』など。 デイリー新潮編集部
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