「家電で楽をするのは贅沢」 松下幸之助が“需要の少ない農村部”に販路を広げた理由
使命感があれば視野はおのずと広がる
幸之助は、素朴な使命感だけで農村への普及を進めていたわけではない。「貧しいから売れない」という"常識"を疑い、いずれ購買意欲が高まると踏んでいたのだ。家庭電化が生活を豊かにすることさえ理解されれば、巨大市場になると見込んだのである。大きな視野を持った戦略家だった。 幸之助は「日本人は一体に視野がせまい。(中略)自分の知っている範囲だけで物ごとを判断しようとすることが間違いなのである」(『物の見方 考え方』PHP研究所)と指摘している。だから「視野の角度を、グングン広げなければならない。十度の視野は十五度に。十五度の人は二十度に」と説いた(『道をひらく』同前)。 私たちは眼前の小利にとらわれていないか。しかし、何のために事業活動に従事しているのかという使命感があれば、視野はおのずと広がるはずだ。いま一度、自分自身の仕事に対する姿勢を見直してみたい。
川上恒雄(PHP理念経営研究センター首席研究員)