Amazon がティームーに対抗して低価格ストア新設中。出品者たちは両者の「競争」に戦々恐々
模倣品問題への懸念とプライベートブランドへの影響
一方、Amazonの広報を担当するマリア・ボスケッティ氏は、「Amazonは、より豊富な品揃え、より低い価格、より大きな利便性で顧客に喜んでもらうため、販売パートナー各社と連携する新たな道を常に模索している」とコメントしている。 ゆりかごやおむつ替えマットなどのベビー用品を販売するジュールベイビー(Jool Baby)で最高経営責任者(CEO)を務めるジュダ・バーグマン氏は、「Amazonに低価格ストアが新設されることで、もっとも大きな打撃を受けそうなのが知名度の低いプライベートブランドだ」と指摘する。 同氏自身のブランドはAmazonだけで年間8桁の売上があり、ほかにもウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)などの大手小売店を通じて商品を販売しているため、それほど大きな脅威を感じていないという。同氏はむしろ、Amazonにはびこる模倣品の問題がさらに悪化することを懸念しているようだ。 Amazonは同社プラットフォームでの模倣品の販売や知的財産権の侵害を禁じており、問題解決のための措置を講じている。Amazonが2023年に開設を阻止した模倣品業者のアカウント数は70万件にのぼるという。 それでも、模倣品の根絶は難しい。過去にはビルケンシュトック(Birkenstock)やナイキ(Nike)など、模倣品対策の不備を理由にAmazonでは自社製品を販売しないと表明した有名ブランドもあった。 「中国の出品者が海外から安く容易に販売できるようになれば、多くの腐ったリンゴを招き入れることにならないかと懸念している」とバーグマン氏は述べている。
ブランド計画の見直しと品質管理
一方、Amazonでキャンドルやコーヒーなどを販売するエヴァ・ハート氏は、家庭用のインテリア製品を扱う別ブランドの立ち上げを計画しているが、ティームーのような低価格ストアができるなら、新ブランドの計画は中止したほうがよいかもしれないと悩んでいる。 「新設のプラットフォームで安く売られることが分かっている商品を、新たに扱うことなど検討することさえ慎重になる」とハート氏は述べている。 Amazonが高級品を含む有名ブランドの出店勧誘にことさら力を入れていることを考えれば、この低価格ストア開設のニュースはいかにも不可解だとハート氏はいう。 たとえば、Amazonは2020年には「ラグジュアリーストア(Luxury Stores)」を立ち上げ、出店する高級ブランドに商品の表示方法などについてより広範な裁量を認めている。 ベビーカーやチャイルドシート用の遮光サンシェードを販売するスヌーズシェード(SnoozeShade)のカーラ・セイヤーCEOは、「Amazonの低価格ストアはコンプライアンスや製品の安全性などについても問題を提起する」と指摘する。 「いったんこの制度がはじまれば、製品の品質管理は難しくなるだろう。それでも顧客は、Amazonで売っているのだから使っても大丈夫に違いないと思い込む」とセイヤー氏は話す。 「このストアで販売する商品の品質管理は誰が担当するのか。何か問題が生じた場合、誰が責任を負うのか。誰も燃焼性試験を行っていないのであれば、子どもが火傷を負ったからといって、中国の製造工場に乗り込むわけにはいかない」。 スヌーズシェードが実店舗での販売から撤退し、シアトルに本社を置くAmazonのプラットフォームに移行したのは10年以上前のことだが、以来、Amazonで競争力を維持するのは難しくなる一方だとセイヤー氏は打ち明ける。ティームーのような競合ストアの出現は、この問題に拍車をかけるだけだ。 「我々は非常に厳しい状況に追い込まれている。破綻する事業者がいくつも出てくるだろう」とセイヤー氏は続ける。「正直に言えば、顔面に一発食らった気分だ」。 [原文:Amazon’s reported Temu-like discount store likened to ‘slap in the face’ by sellers] Allison Smith(翻訳:英じゅんこ、編集:坂本凪沙)
編集部