クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 岸岡智樹のラグビー体験会 ラグビーの難しさを知り、「上手くなるための根拠」を追求
頭を使って”仕掛ける”
梁本が語った「距離感」がさらにこの後のメニューのキーワードになった。岸岡が次のメニューとして「”仕掛ける”をやります」と伝えた。 ここで仕掛けるとは「1:1の状態に持っていくことです」と説き、その状態からどう味方にボールを渡すかシミュレーションを促した。 直前の練習をより試合に近づけたメニューで、参加者はさらに頭を絞らせる。みんなが楽しくも迷いを見せた様子を見て、岸岡はポイントを3つ伝える。 「距離・スピード・方向です。それぞれのバランスを考えてボールを出します。スペースを広げてパスの距離が伸びるとなるとその精度が必要です。 また、走るよりも球の方が速いのでそれ以上になることはない。早く投げすぎないように相手の方向を見るのが大事です。 なので、さきほど言った”腰の動きを見て”使い分けてみてください」 さらに応用の要素が加わったが、相手の動きをみながら徐々にパスを効率的に回せるようになった。レベルが高いと話していた梁本も、さらに驚きと笑顔を見せた。
岸岡が創り上げている価値とは?
頭を使い込んだ後は体を使うタッチラグビーへ。 5回タッチしたら攻守交代となり、さらにタッチの回数を減らして交代の数を多くするなど、短い時間で全員が試合に参加できるよう臨機応変に回していった。 2時間かけて行われた体験会は、今回も怪我なく全員が笑顔で終えることができた。参加者も第4回を終えてみて 「今回はすごく頭使いました」 「いい運動ができたと共に、考えてラグビーできました」 と、充実した表情で振り返ってくれた。 岸岡は体験会のアップデートを重ねており、約1年間継続して感じた手応えを振り返った。 「ラグビーが上手くなるための根拠を追求できることが、この体験ならではの価値だと思っています。 今回は運動量は少なかったかもしれないですが、ちょっと”モヤモヤする”感じ。それが”もっとやりたい”とか楽しさに繋がるので、さらにラグビーにのめり込める環境をつくれたと感じています。 僕は、みなさんに観ているときの視点が変わればいいなと考えているんです。より玄人目線になれる、そういう体験会だと感じています」 そして、最後に訊いたのは現在開幕しているシーズンに向けて。まず梁本にシーズンに向けて取り組んでいること、そして自身について話してもらった。 「オフは体重も増やして戦える体づくりを行いながら、接点のスキルを上げてきました。チームは優勝、個人としては公式戦に1試合でも多く出れるようにすることが目標です」 そして岸岡。昨年は本職のSOに加えてSHでも出場し、出番を大きく増やした。 今シーズンに向けてはフラン・ルディケHCと話し合い、「SHで勝負すると話しました」と決断したことを明かした。 「去年の経験はとても大きかったです。今シーズンも自分が出せる味を出していきたいですし、チームとして勝つこと。自分のプレーが勝利に直結すると思うので、勝つことを貪欲に追い求めていきたい」 オレンジアーミーと共に2人がグラウンドで躍動するシーズンが幕を開けている。 (おわり)
取材 / 文:白石怜平