「代り映えしない」森保ジャパンでW杯アジア最終予選の「負けられない」ホーム2連戦に勝てるのか?
継続性が重視された一方で、前日21日まで実施された5日間の国内組キャンプは何だったのかという疑問も頭をもたげてくる。オフ明けとなる長友や大迫らのコンディションを上げるのが、唯一にして最大の目的だったと思われても仕方がない。 最終日に行われた流通経済大とのトレーニングマッチでは、FW上田綺世(23・鹿島アントラーズ)のハットトリックなどで7-0のスコアで圧勝した。 「非常にいいパフォーマンスを見せてくれたし、代表の戦力であると確認できた。メンバーに入る入らないは別として、チームとして一緒に活動していこうとも考えた」 最終予選へ引き続き招集されなかった13人の国内組をこう評価した森保監督は、怪我などの不測の事態に備えて、前回シリーズと同じく多目に招集するプランも一時は検討したと明かす。最終的に断念した理由は、Jクラブに対する配慮だった。 「シーズン立ち上げのチーム作りの重要な時期に、我々が余剰の戦力として招集させてもらってはいけないと判断した。活動後に隔離期間もあるなかでチームに帯同することによるメンタル面への影響も考えると、ちょうどの人数で活動した方がいいと」 当初の14日間が短縮されたとはいえ、国内組はサウジアラビア戦翌日の2月2日から6日間の隔離に入る。大迫が「できればもう少し短くしてほしい」と話すなど、Jリーグの開幕を同18日に控えた状況で、精神的な負担になっているのは間違いない。 結果として以前から指摘されてきた、チーム内の序列が色濃く反映された顔ぶれになった。指揮官が「ゴールを期待する」と明言したFW前田大然(24・セルティック)にしても、横浜F・マリノスに所属していた前回シリーズではベトナム、オマーン両代表戦ともベンチから外れ、敵地のスタンドで日本の連勝を見届けている。
海外組か否かも序列に大きく関わる、と思われるなかで懸念材料も浮上する。 中国戦へ向けたキャンプは24日から始まり、週末のリーグ戦を終えた海外組も順次帰国してくる。政府から義務づけられた新型コロナウイルスへの防疫対策として、遅くとも24日までに入国。検査で3日続けて陰性が証明されなければ中国戦に出場できないため、なかにはJFAが手配したチャーター便で帰国する選手もいる。 帰国後の初練習は、長時間の移動が考慮されて原則としてランニングを中心とした軽めのメニューとなる。25日が初練習となる海外組が少なくなく、必然的に全員がそろって同じメニューを消化できるのは前日の公式練習だけとなる。 「実際に全員が集まって練習できる期間は少ないが、コンディションを見極めながら、中国戦へ向けてベストなメンバーを選びたい」 森保監督はこう語ったが、時間が限られている以上は、10月シリーズ第2戦のオーストラリア戦から採用している[4-3-3]システムを継続。先発メンバーも変えないアプローチが取られるはずだが、同時に対戦相手も日本を分析しやすい状況を招く。 何よりも生身の人間である以上は、海外組は時差ぼけや長距離移動による疲労を抱えたまま中国戦に臨まざるをえない。思い返せば昨年9月のオマーン戦、同10月のサウジアラビア戦とシリーズ初戦はいずれも苦杯をなめさせられている。 理由は言うまでもなく、特に海外組のコンディションが上がらなかった点にある。海外組を中心とした序列が引き続き重んじられた今回は、さらに代役のきかない精神的支柱としてチームを束ねてきた吉田を欠いた陣容で臨まなければいけない。 残り4試合となったアジア最終予選で、グループBを戦う日本はカタールワールドカップ出場権を自動的に手にできる2位につけている。もっとも、プレーオフに回る3位のオーストラリア代表との勝ち点差は、わずか1ポイントしかない。逆に無敗で首位を快走するサウジアラビアには、勝ち点で4ポイントも離されている。 オーストラリアは27日に最下位のベトナムをホームに迎える。それだけに日本は中国戦で引き分けも許されないし、サウジアラビアにもしっかりと借りを返した上で、敵地で3月24日に行われるオーストラリアとの大一番に臨みたい。 吉田に代わるキャプテンの人選に対して「候補は多くいる。活動が始まってから決めたい」と語った森保監督は、ホーム連戦で勝ち点6獲得を目標に掲げた。 「この2試合、勝ち点3をつかみ取れるように、与えられた時間のなかで最良の準備をしたい。すでに最終予選で2敗している状況でトーナメントを戦うつもりで、目の前の1試合1試合に勝っていって、ワールドカップへ向けて前進していきたい」 選手選考は代表監督の権限となる。その意味で今回の人選でも頑固なまでにポリシーを貫いた森保監督だが、同時に結果に対する責任も負う。サウジアラビア戦を終えた段階で3位に順位を下げる事態が生じていれば、解任を求める声は再び大きくなる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)