2026年のF1テクニカルレギュレーション、最終案は6月末までに決定か? 10月延期論にメルセデスが反対
FIAは先日、2026年から施行される新しいF1のテクニカルレギュレーションについて、その概要を発表した。ただその内容については、チームやドライバーからいくつかの懸念が示されたため、最終決定を10月まで先送りにすることも検討された。しかしメルセデスがこれに反対。6月末までに新レギュレーションの詳細を確定させなければならない状況に陥りつつある。 【動画】次世代F1マシンはこうなる! FIAが2026年新規則を公開 F1カナダGPの木曜日、FIAは2026年シーズンから導入されるF1の新しいテクニカルレギュレーションの概要を発表した。このレギュレーション変更は、すでに決定していた新しいパワーユニット(PU)規格に合わせる形で整えられたもの。マシンは今よりも小さく軽くなり、ダウンフォースの増減をドライバーがコントロールできるアクティブエアロが装備されるなど、今のF1とは一線を画すモノとなる。 ただこの新レギュレーションについては、ドライバーやチームが口々に懸念を表明することになった。新レギュレーション下で生み出されるマシンは、ストレートで異様に速い一方で、コーナリングスピードは異様に遅くなる。そのパフォーマンスは、F1に求められている水準を満たしていないのではないかというのが、その懸念点の中心だ。 この懸念に対処するため、現在レギュレーションの詳細を改訂するための作業が進められている。 カナダGPの土曜日には、FIAのシングルシーター部門担当ディレクターであるニコラス・トンバジスが、今回発表したのはあくまで暫定版であり、今後詳細が変更される予定だと認めている。 「最終的なレギュレーションはまだ完成していない。チームと話し合うべき部分が、まだかなりある」 そうトンバジスは語った。 「マシンのダウンフォースやストレートスピードに関する懸念も認識しており、これらはまだ改善が必要な部分であると、我々も考えている」 ただその修正作業、そして最終決定に向けた道筋は、平坦なモノではない可能性が出てきた。 FIAは、発効の18ヵ月前であれば、チームの承認の必要なく、独自にレギュレーションの内容を整理することができる。つまり2026年の1月に施行されるこのレギュレーションは、今年の6月30日までは、FIAが独自に変更することが可能。もちろん、その行程でチームの意見を聞くなどはするものの、最終的な権限はFIAが持っている。 しかし月が変わって7月となると、物事はそう単純ではない。すでに施行まで18ヵ月を切ったということになり、この時点からいかなる変更もF1委員会の承認が必要となるわけだ。つまりレギュレーションの文言を変更するには、時間と調整が必要とされる事態となってしまう。 なおこのF1委員会では、出席者の過半数の承認があれば、レギュレーションの変更が認められることになる。 ただそういう状況を踏まえつつも、新レギュレーションの内容をブラッシュアップするために、決定期限を10月までに延期するべきだという声も上がった。実際、2026年用マシンの開発に着手できるのは2025年の1月からだとされており、2024年10月にレギュレーションの詳細が決まれば開発には支障が出ないはずだ。 これについてはチームによる投票で全会一致されなければならなかったが、メルセデスがこれを拒否……6月30日までに最終的な案をまとめなければならないという厳しい状況に追い込まれつつあるようだ。 メルセデスとしては、問題の解決を先送りにしたくないという思惑もあるという。もしレギュレーションの決定が10月になれば、実際に開発をスタートできる2025年の1月まで、あと2ヵ月しか残されていないということになる。そうなれば、開発をスタートせずとも、事前に充てることができる準備期間がかなり少なくなる。一方で6月30日までに決まれば、事前準備に6ヵ月を充てることができるわけだ。 ウルフ代表はカナダGPの際、レギュレーションの最終案が良いモノになることに疑いの余地はないと語っていた。 「FIAとチームは、現段階ではマシンのパフォーマンスが十分ではないため、レギュレーションを最適化する必要があることに同意している」 そうウルフ代表は語った。 「それが達成できると確信しているよ」
Jonathan Noble