「反対じゃないけど議論が…」新アリーナ建設問題で民意はどこに “中止”の新市長と“推進”多数の議会 住民投票にならず混迷続く
■建設“推進派”は4分の3ほど…新市長と市議会“推進派”との対立続く
新アリーナの建設を巡っては、豊橋球場の移転先が津波の「特定避難困難地域」であることもあり、住民団体が住民投票を求めたものの、2度にわたり市議会で否決されている。 今回の市長選挙で当選した長坂市長は就任会見で、「新アリーナについては、先ほど契約解除に向けた手続きに入るよう指示をしました。選挙結果は重く受け止めなければいけない」と、改めて意欲を示した。 12月9日、長坂市長が初めて臨んだ議会では…。 豊橋市の長坂尚登市長(12月9日): 契約解除が遅くなればなるほど、本市が事業者に支払うかもしれない金額が増えることを危惧して、速やかに契約解除に向けた手続きを進めるように指示したものでございます。説明ができる資料・状況等が揃ってきたら丁寧に説明を進めていくものと考えています。 市議会は、建設を求める“推進派”議員が4分の3ほどだ。市長が就任直後、議会などに説明することなく事業者に契約解除の申し入れをしたことを問題視した。 自民党豊橋市議団の小原昌子団長: 二元代表制である市長と対等な立場の議会を、軽視していると言わざるを得ません。
■開催10カ月前に中止決定…1996年「世界都市博覧会」
選挙結果で大型公共事業がストップしたことは、過去にもある。 お台場を舞台に1996年、総事業費2000億円をかけて実施が予定されていた国際的なイベント「世界都市博覧会」。 しかし、1995年の東京都知事選で、放送作家の青島幸男(あおしま・ゆきお)都知事が、「博覧会の中止」を訴えた。 青島都知事(当時): 都知事選における私と都民との公約を守るということで決断をいたしました。 公約通り中止を進める青島都知事に対し、都議会側が反発した。圧倒的多数で都議会側が「開催」を決議したものの、結局、開催の10カ月前に中止を決定した。 青島都知事(当時): あらゆるご批判も謙虚に受け止めてまいりたい。しかし信念については変わらず堅持して参りたい。 中止に伴う損失額は610億円だ。ただ、開催した場合の都の支出金はおよそ830億円と予定されていたため、220億円を抑えることができた。 地方自治が専門の名城大学の昇秀樹(のぼる・ひでき)教授は、次のように話す。 名城大学の昇秀樹教授: (豊橋と)非常によく似た事例だと思います。決断をしたことによって何らかの損失が出た場合については、政治的責任は問われて然るべきだと思います。ただ、世界都市博の場合は、どこの都市も快く「民主主義で、選挙の結果そうなったんだったら仕方ないですよ」って言って、そんなに損害賠償請求はしなかった。執行権は首長が持ってますので、そのことについて法的責任も政治的責任も問われてません。 豊橋の問題については…。 名城大学の昇秀樹教授: 豊橋の場合は、あの相手の業者さんが被った損害について、もしかしたら市役所に対して請求があるかもしれませんね。これは市長さんに法的責任はないですけれども、政治的責任は負わなければいけない可能性はあります。民意は多面体なんですよ。