「実写化だけはやめて」「コスプレ感」の声もあったが…『推しの子』実写化への評価が“絶賛”に転じたワケ
新たな驚きと感動のあるアレンジも
脚本に原作者の意向が反映されていることも重要だ。井元プロデューサーによると、赤坂アカは脚本開発をはじめ、さまざまなタイミングで意見を言い、時にはメタフィクション的な表現を面白がって、自身からさかんにアイデアを出していたそうだ。前述した原作で問われた「原作改変」を、実写ドラマという媒体で示すことで、むしろ真正面から向き合うという構図もある。 ドラマ独自の構成の上手さにも感服した。原作漫画を大胆に刈り込みタイトに仕上げつつも、絶対的に大切な部分は外さない取捨選択、提示するエピソードの順番の変更、またドラマ独自のシーンなどが、キャラクターの心理描写をより鮮烈にし、原作やアニメを楽しんだ身としても新たな驚きと感動があったのだ。 例えば第7話にて、ルビーがとあるショッキングな事実を知る過程が、過去のエピソードの挿入もあってより切実に胸に訴えてくるものになっている。さらに第8話での、原作では有馬かなのことが良くも悪くも嫌いになってしまいかねないエピソードが、ほとんど大筋を変えないまま、彼女へのヘイトを溜めすぎないような調整がされており、かつ今後のキャラクターの関係性を追いたくなる改変として、大いに肯定したくなった。 また、劇中で作られる映画「15年の嘘」の設定にもとある大きな改変があり、現時点では賛否を呼んではいる。しかし、ドラマから続いて劇場公開される映画では、きっとその意図もわかることだろう。
映像作品の新境地を目指している
井元プロデューサーは、原作の魅力を最大限表現するためには「ドラマだけでも、映画だけでも足りないというのが課題」とも語っている。配信ドラマと映画のフォーマットを組み合わせてストーリーを構成したのは、「映像作品の新境地にたどり着けるのではないか」という考えの元だったそうだ。 さらに(原作では第1巻に当たる)冒頭部を「配信ドラマ1話」と「映画版前半」に構成する、大胆な座組を試みているという。なるほど、それも井上プロデューサーの言う「配信ドラマと映画という新たな挑戦だからこそできた新たな仕掛け」なのだろう。 いずれにせよ、12月20日公開の映画『【推しの子】 The Final Act』がとても楽しみだ。映像作品の新境地どころか、漫画の実写映画化の歴史を変える作品になることを期待している。 <文/ヒナタカ> 【ヒナタカ】 WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF
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