王者の西武が泥沼7連敗のワケ
その後の反撃が1点にとどまり、最後は西武出身の牧田和久に抑えられて連敗が7に伸びたなかで素朴な疑問が残る。西武として初めてショートスターター戦術を採ったのはなぜなのか。答えは6イニング以上を投げ、なおかつ自責点を3点以内に抑えた先発投手に記録されるクオリティ・スタートを、8回の先発で5度達成したザック・ニール以外はほとんど達成できていないからだ。 ニールの他には松本航、高橋光成、与座が2度ずつ、今井と本田圭佑が1度ずつとなっている。不甲斐ない内容の続いた今井はローテーションから外れ、7連敗のスタートとなった6日の日本ハム戦では、与座も4回途中で4失点を喫してノックアウトされている。 それでも連敗前まで勝率5割前後で踏ん張ってこられたのは、昨シーズンまでとは比べものにならないほどリリーフ陣が充実していたからに他ならない。一時は防御率1点台をマークしていたリリーフ陣を総動員してでも、4年目を迎えた辻政権下ではワーストとなる連敗を阻止し、巻き返しへの狼煙をあげる狙いが、楽天戦で採られたショートスターター戦術に込められていたはずだ。 しかし、高温多湿の真夏の陣を迎え、先発ローテーション陣がイニングを稼げない試合が長く続く間に、必然的にリリーフ陣にも疲労が蓄積されていく。防御率0点台の守護神・増田達至の登板に至らない展開も少なくなく、8日の日本ハム戦ではセットアッパー、リード・ギャレットが160kmのストレートを投げ込むも痛打され、一時は4点も奪っていたリードをひっくり返されて負けている。 試合を重ねるうちに目を覚ますはずだ、と期待されてきた「山賊打線」も鳴りを潜めている。3年連続でパ・リーグ最多得点と最高打率をマークし、連覇を支えてきた自慢の強打線は、いまでは総得点で5位、チーム打率と三振の総数ではワースト1位にランクされている。 3年連続のホームラン王を狙う山川穂高が先の日本ハム戦で右足首を捻挫し、今回の楽天との6連戦シリーズでスタメンを外れている。投手陣のリードで精いっぱいなためか、直近の10試合で打率.147と極度の不振に陥っている昨年の首位打者およびMVP、森友哉を外して岡田にマスクをかぶらせ、9番には入団5年目の呉念庭を配した新オーダーも十分には機能しなかった。 加えて、先発投手陣の不振の影響を受ける形で、チーム防御率もリーグワーストに甘んじている。 文字通り投打ともにどん底の状態にあえいで5位に沈み、同率で首位に立つ楽天とソフトバンクとのゲーム差が8に開いた苦境にも、辻監督は、「下を向かずにやっていくしかない。やるしかないんです。一生懸命にやって、ひとつ勝てば変わると思う」と、前向きの姿勢を失っていなかった。 今日14日には連敗ストップをかけてニールが先発のマウンドに立つ。 2年越しの連勝が13で途切れた先月31日のソフトバンク戦に続いて、6回3失点とクオリティ・スタートを記録した7日の日本ハム戦でもニールは敗戦投手になっている。それでも、一時はチームの拠りどころになった「不敗伝説」の第2章に連敗地獄からの脱出と、巻き返しへのきっかけを託す。 (文責・藤江直人/スポーツライター)