性犯罪“被害者”への謝罪文を「生成AI」で作成し物議 「メリットはありません」弁護士がきっぱり言い切る理由
今年4月、読売新聞のある報道記事がSNSを中心に世間を騒がせた。性犯罪の加害者側代理人である弁護士が、本来、加害者自ら書くべき被害者への謝罪文を、生成AIを使って“代筆”していたというのだ。 【図解】生成AIの市場規模、2030年には14兆円越え… 報道によると、当初加害者が被害者に向けて書いた謝罪文は「心を踏みにじってしまい申し訳ありません」という一文のみだった。弁護士はこれを見て「加害者は反省はしているが文章作成は得意ではない」と考え、代筆を行うことに決めたという。そして、生成AIに「性犯罪者が提出すべき謝罪文を書いて」などと指示を与え、文章を作成。これを加害者に手書きさせ、刑事処分で情状酌量を求めるため、被害者側に提出したようだ。 たしかに生成AIを、“仕事の効率化”を目的として使っている人は多いだろう。しかし、本件のように謝罪文の生成AIによる作成が一般的になれば、「加害者の反省を被害者に伝える」という謝罪文の意義そのものが揺らいでしまうのではないか。 そもそも弁護士による謝罪文の代筆は一般的なのか、そして生成AIによる謝罪文作成をどう考えるか。国選弁護をはじめ刑事弁護を多く担当する本庄卓磨弁護士に聞いた。
謝罪文の「目的」とは?
――まず、生成AIで謝罪文を作成した弁護士がいると聞いた時、本庄弁護士は率直にどのように感じましたか? 本庄弁護士:生成AIを使用してまで謝罪文を作成することに意味があるのだろうかと疑問に思うとともに、なぜ担当弁護士が生成AIを使用したのか気になりました。 そもそも、謝罪文を作成する目的は、加害者の反省を加害者自身の言葉で、真摯に被害者へ伝えることであって、謝罪文を作ること自体が目的ではないのです。 ――生成AIを使用していたことが発覚すれば被害者の2次被害につながるのではないかとも懸念されていますが、弁護士の業務効率化などを目的として、生成AIによる謝罪文作成が今後、一般的になることは考えられるでしょうか。 本庄弁護士:一般的になることは考えにくいと思います。謝罪文の作成を通じて加害者が反省を深めることが期待できなくなりますし、被害者が生成AIによって作成された言葉を受け入れるとも思えませんから。