37億年前-世界最古記録の生物化石「ストロマトライト」の発見(上)
地球は46億年前に誕生したといわれています。そして生命は約40億年前に生まれ、わたしたちホモ・サピエンスの種が初めて現れたのは、およそ20万年前。地球の長い歴史を1年に置き換えた場合、人類は12月31日午後11時半過ぎにようやく出現したと例えられるほど、わたしたち人間の歩みは実は、とても短いものです。 人類出現まで、地球はどのように環境を変え、生き物はどのように進化してきたのか―。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、世界の最新化石研究について報告します。 ----------
2016年8月31日付けの学術雑誌NATUREに「世界最古」とされる生物化石の研究が発表された。 ( グリーンランド南東部の37億年前と推定される地層から見つかった今回の化石は、非常に斬新で興味深い発見といえる。 発掘現場の風景
37億年前。長い地球の歴史において、どれくらい古い地質年代にあたるのか、想像がつくだろか?地球の誕生は約46億年前と推定されている。多細胞生物(=動物)の最古の化石が約6億年前。最古の脊椎動物は5億年前頃。恐竜がはじめて現れたのが約2億3千万年前で、(2016年10月現在)知られている限り最古の人類は280万年前だ。(イメージ1参照) それまでに見つかった最古とされる生物化石は、約35-36億年前の地層からのものだった。バクテリアの仲間で単細胞生物の個体の化石だ。顕微鏡でなんとか観察・識別できるサイズの生物だ。今回の発見はそれよりも1-2億年は古いことになる。 「世界最古の生物化石」に関する研究発表は専門の学術雑誌などで時々目にする。しかし、こうした生物グループにおいて、化石標本にもとづくはっきりとした正体の確認・判定はなかなか簡単ではない。まずその性質が単細胞生物という点による。骨や歯のような化石としてよりと保存されやすい硬質の体の部位は見あたらない(ほぼ水分とタンパク質系の物質からなる)。実際岩石などから派生した「ただの鉱物の粒ではないか?」「火山灰ではないのか?」こうしたクレームや疑念の目が他の研究者から常に向けられる運命にある。 そして多細胞生物のものと比べバクテリア類の細胞のサイズは極端に小さい。バクテリアの細胞はわずか0.0005-0.005mm(0.5-5.0μm)ほどだ。(ちなみに人間の体細胞は種類によって1-2ミリにもなる。)こうした条件を顧みれば、何十億年以上の長い時を経て、化石として保存および発見されること自体、奇跡的な出来事だと分かるだろう。