日銀マイナス金利 効果はあるが“短期的な劇薬”
なぜ導入されたのか?
マイナス金利には、デメリットも当然あります。マイナス金利は銀行の収益を低下させるので、場合によっては逆効果になるかもしれません。また、日銀当座預金は、金融機関間の資金過不足を調整する際の口座ともなるので、短期金融市場が機能しなくなったときのリスク(流動性リスク)への対応が不十分になるかもしれません。 1997年の金融危機(北海道拓殖銀行の破たん)がコール市場という短期金融市場が舞台であったことを思い返すと、短期金利の下限がなくなるのには不安もあります。(ただし日銀当座預金の「3段階構造」により、1段目には金利が付くという工夫があります)。 また、効きすぎると、今度は過剰な投資をもたらします。現在、中国経済が不振に陥っているのは、これまで過剰に投資を行ってきたからです。生産量に見合うだけの設備であればよいのですが、それを超えてしまうと、その財の価格は過剰生産により下落してしまいます。原油安も需給バランスの変化が原因の一つですが、それは新興国の需要減のみならず、生産設備(供給面)が過剰である面もあります。すなわち、マイナス金利という金融政策は、長く続けるとむしろデフレ要因となってしまうかもしれないのです。 さらに重要なのは、国債金利がさらに低下することで、財政再建へのインセンティブが緩くなり、長期的には財政問題の解決をさらに難しくしてしまうかもしれないことです。 しかしながら、一方で、日銀が目標とする2%インフレは達成できていないばかりか、今後も厳しい見通しです。消費者物価指数をみると、2015年12月のインフレ率(コア)は0.1%でした。さらに、東京都区部について、2016年1月インフレ率は-0.1%とマイナスになっています。原油安の影響で、インフレ予想も低下していると考えられます。 量的金融緩和はすでに大胆に行っており、これ以上、多少拡大したところでインフレを実現できそうにありません。ここで、何らかの手を打たないと、また、ずるずるとデフレに戻ってしまう可能性が高くなっています。そのためマイナス金利の金融緩和が採用されたと考えられます。