日銀マイナス金利 効果はあるが“短期的な劇薬”
効果はどう出る?
新たな金融緩和策は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」と、マイナス金利付きという言葉が加わっただけのようですが、これまでとはまったく異なる仕組みです。 これまでは、金融機関が保有している国債を日銀が購入することで、銀行にその資金を民間や海外など、国債以外へ資金を回すことを促していました。まさに、量的な資金供給となっています。以前も日銀はこのような金融緩和は行っていたのですが、それを大胆に行い、人々の予想・期待への働きかけを強めたのがアベノミクスの特徴です。 さて今回は、量的というよりは市場メカニズムを利用した政策です。この政策は経済学の教科書で学ぶような効果を もたらすもので、金利を下げることで、経済(民間投資など)を活発化する(民間投資が増える)というものです。このような金利引き下げによる金融緩和は、しかし、金利がゼロに達してしまうとそれ以上下げられなくなります。そのため、量的緩和策が行われてきたのですが、それでも効果がないので、今度は金利をマイナスにしようとなったのです。 マイナス金利の効果は、住宅を例にして考えると分かりやすいでしょう。 通常は、賃貸住宅に住むか、持ち家に住むかはほとんど金銭的な違いはないと考えられます(ただし、実際には条件により違いはあります)。同じ条件なら、毎月の住宅ローンと賃貸価格は同じとなるイメージです。 ここでマイナス金利が導入されるとどうでしょうか。ローンを組むことで、利払いではなく利子収入が発生するようになります。持ち家なら(元本の返済は必要ですが、借入額と住宅資産の差額である純負債はゼロとすると)、マイナス金利による利子収入分が得になります。ただし、 賃貸価格も下がるかもしれません。それでも、ある程度資金があるなら、その資金を預金してしまうと利子分が「逆に」支払いとなるので、預金するよりは住宅を購入したほうが得です。 これまで、量的緩和でいくら銀行が貸してくれやすくなっていたとしても、人々は住宅価格やローン負担を踏まえて住宅購入を決めるため、購入に踏み切れなかったかもしれません。けれども、マイナス金利ならそれを後押ししてくれる可能性が高まります。 ただし、これは例で、マイナス金利は日銀当座預金という特殊な口座に付くだけなので、実際に住宅ローンの金利がマイナスになるわけではありません。それでも、銀行はこのような「経済原理」のもとで、資金を運用することになるのには変わりがありません。 以上、今回の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」についてみてきましたが、これは短期的な劇薬と考えるべきです。長期的な経済成長には何ら寄与しません。そもそも、金利がかなり低くなってから行われるような投資は、投資の利潤率も低いはずで、そのような利潤率の低い投資が増えても、長期の成長率を押し上げることはできません。 私は、今回の政策に効果が出るとしても、現在の雇用環境の改善傾向や、原油安によるコスト減少があるので、このような政策は必要なかったのではないかと思います。日銀はインフレ目標を達成する必要はあるかもしれませんが、原油安などを踏まえて、2%に到達しなくても、この程度の幅なら許容しても良かった のではないかと考えます。