「すごく寂しい人生...彼を受け入れる社会があったのか」26人死亡の放火事件で兄亡くした妹が容疑者に思うこと たどり着いた答えは加害者への寄り添い「やり直そうとしている人がいると伝えたい」
「京都アニメーション放火殺人事件」青葉被告の裁判の傍聴へ
谷本容疑者には、犯行の参考にしたとされる事件がありました。北新地の事件の2年前に起きた京都アニメーション放火殺人事件。社員36人が死亡、32人が重軽傷を負いました。 去年9月、裁判が始まり、現場にガソリンをまいて火をつけた青葉真司被告(46)が法廷で語り始めていました。
多くの人が巻き込まれた、その真相に迫ることで、これまで直視できていなかった遺族としての感情に向き合う必要があるという思いから、伸子さんは青葉被告の裁判の傍聴に訪れました。 (青葉被告)「たくさんの人がなくなるとは思っていなかった」 軽率な気持ちで犯行に及んだ青葉被告。この日の裁判では、初めて遺族が被告に質問を投げかけました。自分の愛する家族がなぜ殺されなければならなかったのか。遺族らは、被告の言葉に答えを探しました。
「加害者への寄り添いが新たな犯罪を防ぐ近道」と考えるように
傍聴を終えた伸子さんは… (伸子さん)「奥さまを亡くされた方がいくつか質問されてたんですけど、最後に『火をつけるときに、その方に家族がいるとか子どもがいるとか考えなかったんですか』という質問をなさって。『考えてなかったです』とおっしゃってたんですけど。そのときに北新地の事件で、皆さんに家族がいて、本当に皆さんのつらさとかが一気に感じた気がして、聞いててつらかったですね」 無差別に多くの人が殺害された2つの事件。谷本容疑者と青葉被告には共通点がありました。それは別の事件で服役していた過去があり、孤独だったとされること。一度過ちを犯した加害者に寄り添い、手を差し伸べることが、新たな犯罪を防ぐ近道かもしれない。伸子さんはそう考えるようになりました。
「これからどうするかが大事」伸子さんの言葉に背中を押された元受刑者
奈良県にある元受刑者や依存症の人を支援する施設。伸子さんは、ここに2週間に1度足を運び、利用者の相談にのっています。施設を利用する32歳の男性。ギャンブルに依存した結果、金に困り、いわゆる「闇バイト」に手を染め逮捕されました。 取材した日は男性と3回目の面談。趣味のマラソンのことや、最近の悩みなど約1時間、話をしました。 (伸子さん)「今、悩んでいることもない?」 (施設を利用する男性)「睡眠の質のことくらいですかね。熟睡がずっと前からできなくて。眠りが浅くて」 男性は、出所してもしばらくの間、罪を犯してしまった罪悪感から前を向けない時期があったといいます。そんな時に背中を押したのが、伸子さんから言われた「過去は変えられないが、これからどうするかが大事じゃないか」という言葉でした。