「すごく寂しい人生...彼を受け入れる社会があったのか」26人死亡の放火事件で兄亡くした妹が容疑者に思うこと たどり着いた答えは加害者への寄り添い「やり直そうとしている人がいると伝えたい」
大阪・北新地のビルに入る心療内科クリニックが放火され、患者やスタッフら26人が死亡した事件から12月17日で3年となりました。事件を起こしたとされる谷本盛雄容疑者(当時61)はクリニックの元患者で、自らも一酸化炭素中毒で死亡。事件の動機など真相は明らかになっていません。 【画像を見る】元受刑者や依存症の人を支援する施設で相談に乗る伸子さん この事件で亡くなったクリニックの院長・西澤弘太郎さん(当時49)の妹の伸子さんは現在、クリニックに通っていた元患者の支援を行っています。さらに、この1年で『加害者に寄り添うこと』にも力を入れるようになったといいます。その理由とは何なのか、取材しました。
兄・弘太郎さんはいつも気遣ってくれる優しいお兄ちゃん
伸子さん(47)は、大阪府内で夫と息子2人の4人で暮らしています。主婦業の合間に、保護者会の活動や地域の交流イベントなどに参加し、忙しい日々を送っています。 (伸子さん)「主人がね、毎日弁当なんですよ」 (記者)「愛妻弁当ですね」 (伸子さん)「愛妻かどうかは知りませんけど…(笑)」 医師と歯科医の両親の間に生まれた伸子さんと、兄・弘太郎さん。学生時代には、朝まで一緒に勉強をするなど、伸子さんのことをいつも気遣ってくれる優しいお兄ちゃんでした。卒業後、弘太郎さんは父と同じ内科の医師に、伸子さんは母と同じ歯科医になりました。 伸子さんが結婚・出産を機に仕事をやめたころ、弘太郎さんは大阪・松原市の実家で「心療内科」を開業しました。心の病が原因で体調不良を訴える患者が多かったからです。その後、北新地にも「こころのクリニック」を開業し、2つの施設で計800人以上の患者と向き合っていたといいます。
「すごく寂しい人生」孤立深めていた容疑者に思うことは…
事件があったのは金曜日の午前。北新地のクリニックには大勢の患者がいました。火をつけたとされる元患者の谷本容疑者。スマートフォンには交友関係を示す連絡先はなく、銀行口座の残高もなかったといいます。生活が困窮し、社会から孤立を深める中、自暴自棄になり他人を巻き添えに“拡大自殺”を図ったとみられています。 (伸子さん)「人間って本当に人と関わっていかないといけないものだと思うんですよね。谷本容疑者もほとんど学校の先生が覚えてないとか、存在はなかったとか、そういう人だったとお聞きして。すごく寂しい人生を、誰にも『自分はこう思ってる』すら言ってないような気がするんですよね。『それは間違ってるで』とかいう人がいてたっておかしくない」