ホンダの三部敏宏社長が初めて触れた「業界変革」の具体的な中身、「0(ゼロ)テックミーティング2024」で見たホンダの行方
つまり、“ホンダらしい”走りが統一されているということだ。 そのほかにも先進ドライバー運転支援(ADAS) や自動運転技術、データやサービスを敏速に行うためのE&Eアーキテクチャー、AIを使った車内および車外でのドライバーの意図理解・行動予測、遠隔からの仮想同乗などの最新技術を体験し、量産レベルに達していることを肌で感じることができた。 ■変わる「バリューチェーン」 四輪生産本部では、6000トン級で行う鋳造技術、いわゆるメガキャストで生産するゼロシリーズ向けバッテリーパックの製造工程や、ホンダが独自に開発した直流を制御する溶接手法「CDC」などについて詳しい説明を受けた。
丸1日にわたり行われたゼロテックミーティングを通じて、ゼロシリーズの技術的な背景や、ホンダ技術のポテンシャルはよくわかったが、その一方で「コスパと実用性を考慮したクオリティ」と「他社との差別化」とのバランスの難しさを感じたことも事実だ。 各種の技術とサービスがゼロシリーズの魅力を高めることはわかる。しかし、BEVがグローバルで急激に進化する中で、ユーザーが“ホンダらしさ”をどうとらえるのかは未知数である。
そこでキーになるのが、いわゆる「バリューチェーンの変革」だ。ここでいうバリューチェーンとは、ユーザーが新車を手にしたあとのサービス領域全般を指す。 一方で、自動車製造過程での材料や部品の調達、そして最終組み立ての領域をサプライチェーンと呼んでいる。現在の自動車産業は、実質的にサプライチェーンとバリューチェーンが分離している構造だ。 これが次世代BEVになると、充電・給電によるエネルギーマネジメントや、バッテリーのリサイクル・リユース、SDV(ソフトウェア・デファインド・ヴィークル)化によるデータ管理・通信まで、さまざまな領域が枠を超えて関わっていくことになる。
そこで、三部社長に対して「バリューチェーンの変革やメーカー/ディーラー/ユーザーとの関わり方は、どう変わっていくのか」と尋ねた。 これに対して三部社長は、ハードウェア/ソフトウェアという2つの視点から回答した。電動化については、電池の材料調達・製造、リユース、充電などで「複数の事業が立ち上がっている」とする。 具体的には三菱商事と協業するALTNA(オルタナ)や、アメリカで自動車メーカー7社と協業するIONNA(イオンナ)などだ。それら各事業が最終的にはエコシステムとしてつながり、新しいビジネスの構築を目指すという。