<41年ぶりの春>鶴岡東・支える地域/中 私費で寮建て選手見守る OBの的場裕典さん /山形
◇日常の「変化」気配り 鶴岡東の野球部は関東や関西などの中学出身者が多く、昨夏の3年生の引退後は、部員66人のうち43人が鶴岡市内の下宿で共同生活を送る。私費で寮を建て、部員と同じ屋根の下で生活を共にするOBの的場裕典さん(37)は8年前、「下宿をやらせてください」と佐藤俊監督(48)に申し出た。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 コンビニエンスストアの弁当で食事を済ませる部員を目にしたのがきっかけだった。「飲食業の経験がある自分なら役に立てる」と考えた。以来、1日60キロのコメを炊いて朝食と夕食をサポート。部員は2~4人部屋で、トイレや風呂掃除は分担して行う。日常生活での“変化”に気を配り、埼玉県の中学出身で寮長を務める山崎俊太郎選手(2年)らとはチーム内の情報を共有する。 1年生はホームシック気味になることがあり、悩みを聞く。試合で打てなかったことを引きずり夕食を食べるのが遅い部員がいると、「今日は何かあったのか」などと声を掛ける。起床後のあいさつがおざなりな部員には「言われた方はどう思うのか」と、やり直しをさせることもある。昨年10月の秋季東北大会は決勝で守りのミスなどがあり、仙台育英(宮城)に敗れた。落ち込む部員に「ミスをして負けたのは、日常生活でも見直せる部分があるんじゃないか」と発破をかけた。 毎年部員の特徴は変わるが、今の部員は「例年にないくらい自立心が強い」とみる。「体調管理を」などと最小限の内容を伝えると、すぐにミーティングを開き、自分たちで日々の課題を共有して解決しようとする。「8年間見てきたが、異例のことだと思う」と話す。 高校時代は控え投手だった的場さん。自身がいたころより競技レベルの高さを感じており、「野球だけではなく日常生活をしっかり取り組んでいるところに強さがある。卒業後も多くの人に好かれる修行だと思ってほしい」と厳しくも温かく選手たちを見守っている。【渡辺薫】