イランのイスラエル攻撃で「ウクライナ」が嘆く理由 NATO非同盟国への対応の違いが招く戦争リスク
■西側にとって最前線基地でもあるイスラエル 一方、ロシアの攻撃を2年以上受け続けるウクライナに対する西側諸国の姿勢は、明らかにイスラエルへの対応と異なる。イギリスのキャメロン首相は「欧州諸国は大規模な軍事支援を行い、過度にロシアを刺激すれば、戦争のエスカレーションで欧州全域に戦争の危機が広がることを懸念している」と述べている。 さらに欧州内にはユダヤ人コミュニティーとイスラム系コミュニティーが存在し、つねに緊張をはらんでいる。十字軍の時代から続くイスラム勢力と西側諸国の対立は歩み寄れないほどの距離を持つ。イスラム勢力は西側同盟国を敵としてしか見てこなかった。その中で唯一、西側と価値観を共有できるのがイスラエルだ。西側の支援で建国を果たしたイスラエルは、西側にとっては前線基地でもある。
長年のユダヤ陣営のアメリカでのロビー活動もあり、フランスをはじめヨーロッパに広がるユダヤ社会は政界、財界、法曹界、メディアに人を送り込み、強力な影響力を持つ。いざとなれば非NATO加盟ながら、加盟国並みの防衛を行使するシステムが構築されている。ウクライナはもともとソビエト連邦の一部で、NATOや欧州連合(EU)への加盟を希望しているが、背後のロシアの存在をつねに気遣っている。 今年に入り、共和党が過半数を占めるアメリカ下院は対ウクライナ支援予算を通すことができず、4月15日にジョンソン下院議長はイスラエルとウクライナへの支援を今週、別個の法案として審議すると述べた。上院を通過した法案は総額950億ドル規模でウクライナ支援に600億ドル、イスラエル支援に140億ドルを充てるとなっている。
ウクライナ支援がこれ以上遅延すれば、ウクライナは取り返しがつかないほど疲弊し、欧州全体が戦争の危機に陥る可能性もある。ゼレンスキー氏は「今、全世界がイスラエル空域と近隣諸国におけるイスラエル同盟国の行動から、テロを防御するために一致団結する効果がいかに大きいかを目の当たりにした」と述べた。 ■全面戦争にエスカレートする危険性 今、最も注目されているのは、イスラエルのイランへの報復がどのような形で実行されるかだ。ユダヤ教で言う「目には目を歯には歯を」の考えが頭をもたげることが懸念されると、イギリスのBBCは指摘する。そうなれば全面的な地域戦争に至る可能性がある。シリアのイラン在外公館を全壊させるほどの大規模なエスカレーションには、エスカレーションで応える必要があると、イラン政府は判断した。