イランのイスラエル攻撃で「ウクライナ」が嘆く理由 NATO非同盟国への対応の違いが招く戦争リスク
イランからイスラエルに発射された自爆ドローンや、巡航ミサイル、弾道ミサイルの大半が迎撃されることはイランには想定の範疇だった。重要なことは歴史上始めて、中東の大国で反アメリカの急先鋒のイランがイスラエルを直接攻撃したことだった。 ■西側同盟国の遅々として進まないウクライナ支援 だが、ウクライナの見方は異なる。ロシア軍がウクライナに向かって発射する無人ドローン機は、今回イスラエル攻撃に使用されたのと同じイラン製だ。強固な防空システムさえあれば、ウクライナも迎撃できたはずだ。
アメリカなどの協力のもとにイスラエル軍が構築した防空システムは多種多様で、最も知られているのはイスラエル独自の地上発射型の防空システム「アイアンドーム」、さらに標的への命中率は90%と言われる「ラファエル・ディフェンス・システムズ」、アイアンドームの海上防空システム版の「Cドーム」、中長距離用のミサイルやドローンに対抗する防空システム「ダビデ・スリング」、さらに弾道ミサイル迎撃システムの「アロー2」と「アロー3」も保持している。
加えて、アメリカ製の地対空ミサイル「パトリオット」も今回活躍したとされる。ドイツはウクライナの防空能力を強化するパトリオット・ミサイル防衛システムを1基追加で送ることを約束したが、トーラス巡航ミサイルの提供は拒否したままだ。 フランス、イタリアは共同開発したSAMP/T-マンバという防空システム供与を決めているが、稼働に至っていない。西側同盟国の遅々として進まない支援にゼレンスキー氏がいら立つ中、4月17日、EU首脳は「ウクライナへの防空を緊急に提供する」必要性の認識で合意したものの、具体的には何も決まっておらず、「氷河期的ペース」と欧州メディアは指摘する。
イランのイスラエルへの直接攻撃への対応は迅速で、先進7カ国(G7)は議長国イタリアのメローニ首相が4月14日夜、オンライン形式で首脳会談を開催し共同声明を発表、攻撃を「最も強い言葉で非難する」と述べた。同時にイスラエルの安全保障への関与を再確認した。当然ながらG7の一員である日本も合意文書に署名している。 ところがイランから原油供給を受け、伝統的友好関係にある日本は、イスラエル寄りのアメリカやイギリス、フランスと歩調を合わせるしかなく、ダブルスタンダードと批判される中、独自外交は展開できていない。さらにG7は、イランの石油輸出や高官を標的にした制裁の検討に入った。イランへの厳しい姿勢が、報復攻撃を検討するイスラエルに自制を促す狙いもあるが、日本は葛藤している。