イランのイスラエル攻撃で「ウクライナ」が嘆く理由 NATO非同盟国への対応の違いが招く戦争リスク
実際、ガザ攻撃ではハマスがイスラエルを攻撃して奪ったユダヤ人の命は約1200人で、対する25倍の3万人以上のガザ市民やハマス活動家をイスラエルは殺害した。この報復の応酬こそ中東地域全体を巻き込む全面戦争にエスカレートする危険をはらんでいる。 アメリカ依存のNATOからの脱却を模索する欧州諸国も、イスラエル寄りの外交を続ける一方で、マクロン仏大統領は「ウクライナ紛争はロシアに勝つしか終結の選択肢はない」と言明し、対ロシア懐柔策から距離を置き、場合によっては地上軍派遣もやむをえないと発言している。NATOが本気でウクライナの空を守れなければ、ロシア軍によるEU域内攻撃の可能性も出てくる。
皮肉にもウクライナをネオナチと同一視する発言を繰り返すロシアのプーチン大統領からすれば、ロシアに近いイランのイスラエル攻撃を表向き自制するよう要請したものの、結果的に西側諸国がイスラエルの防衛支援には迅速かつ大規模に対応したことで、ウクライナ防衛とのダブルスタンダードが歴然だったことから、ウクライナをあざ笑っている可能性は高いとも言えそうだ。
安部 雅延 :国際ジャーナリスト(フランス在住)