「まぶた欠損」で生まれた1歳息子をYouTube配信する両親の決断
約10カ月間、お腹の中で子どもを育てる不安やプレッシャーもある中での突然の事態で、しほさんの不安は当然だろう。一方、孝輔さんはまだ見ぬ子への実感は薄かったというが、それでも、孝輔さんのその底知れぬポジティブさに、しほさんは救われた。 「僕はまだはっきりしないことは考えても仕方ないと考える性格なんですが、彼女の場合は知ることで安心するんです。夜通し病気のことを調べて落ち込んでいることはわかっていたので、それを僕の前で吐き出してもらいました。そうすれば前に進める人なので。それに、お腹の子は“親ガチャ”に成功しているから大丈夫だって思ったんです。こんなに素晴らしい女性とめちゃくちゃポジティブな僕のもとに生まれてくるんだから」(孝輔さん)
“人とは違う”。それも障がいという形の差異だとしたら、ポジティブになれる人は多くないだろう。自分のことでも不安なのに、わが子がそうだったら。どれだけ厳しい世界に置かれてしまうのか心配で、人目に触れることをためらう親もいるかもしれない。 ところが、孝輔さんの発案で2人はYouTubeで未来くんの姿を多くの人に見てもらうことを選択した。現在アップされている動画の再生数は、数十万から多いもので300万回を超えている。
「最初はYouTubeでの発信には慎重だったんです」としほさん。 「妊娠中に異常がわかってからブログで発信していましたが、それは何度も推敲を重ねて言葉を慎重に選ぶことができるから。でも動画だと情報量が多くて、どんなふうに伝わるのかが未知数でした。考えが変わったのは、夫と何度も話し合いを重ねたことと、あとはプロレスラーの本間朋晃さんのお話を知ったことがきっかけでした」(しほさん) 独特のガサガサ声で話す新日本プロレスの本間氏は、試合中の怪我が原因で声が出しにくくなってしまったという。しかし、テレビ番組でその声を使って笑いをとったところ一躍人気者に。「あえてハンデを見せて人に愛されるようになった本間さんを見て、おもちくんにもそういう可能性があるかもしれないと思いました」としほさんは言う。