日本初「3時間耐火」を実現した木材の開発秘話ーー木村一義・シェルター会長
■3時間耐火で高層ビル建設を可能に
――2017年には、火災に耐える燃えない木材「クールウッド」が木質耐火部材としては日本初となる3時間耐火の大臣認定を取得しました。高さや階数の制限がなくなり、木造の高層ビルが建てられるようになる、画期的な製品です。当時、大手ゼネコンも同様の開発を進めていたなかで、なぜいち早く成功できたのでしょうか。 シェルターという会社は「ゲームチェンジャー」です。既存のゲームのルールでは、大手に負けてしまいます。 ですから、常に技術を磨き、新たな市場をつくっていくという姿勢でいます。クールウッドは、「燃え止まり層」に石こうボードを使用した木質耐火部材です。外側が燃えても、中間に石こうボードがあるので、構造を支える内部の木材は燃えません。この発想も良かったと思います。 意思決定の早さも大手とは違いますね。私たちは「即断即決」。良いものは取り入れて、悪いことはすぐ止める。当たり前のことがやりやすいのです。 3時間耐火に成功したときは、飛び上がって喜びました。泣けてきましたね。とにかく誰よりも早く成し遂げたかった。
――木村会長が思い描く「木造化した都市」は、どのような姿ですか。 街を歩く人たちの表情が和やかになることです。いまは世界のどの都市に行っても、幸せそうな顔で歩いている人にはめったに会いません。どこかピリピリしている。コンクリートに囲まれて、まるで人々は武装しているようです。 繰り返しになりますが、人間も動物なのですから、天然素材を使った建物で過ごす方が自然なのです。非人間的な空間は、効率的かもしれませんが、快適でしょうか。 国産材を建築材として使うことで、生物多様性は守られ、地方も活性化し、都市で暮らす人たちも心豊かに暮らせる。これが私たちの目指す姿です。