社会人になっても「勉強する人」「しない人」の差は、将来の認知症リスクに表れる!【山田悠史医師】
脳トレやパズルだけでは認知症は防げない
ここで重要なのは、「知的刺激」の質と量です。例えば、短期間のコンピューターを使った認知トレーニング、いわゆる脳トレやパズルなどは、短期的には認知機能に小さな良い効果があるかもしれませんがその効果は極めて限定的で、長期的な効果は未だ示すことができていません(参考文献8)。これは、費やした時間や継続性の問題なのかもしれません。安易で付け焼き刃な「脳トレ」をちょっとやっただけではダメなのです。広告では、まるで認知症を防ぐ魔法のように謳われてしまっているかもしれませんが。 これに対して、仕事での知的刺激は長期間にわたって続くため、より効果的だと考えられます。また、仕事以外でも、日常生活の中で継続的に知的な活動を行うことこそが重要なのです。 一方で、知的活動とは正反対の影響を与える可能性があるのが、ソーシャルメディアの過剰な利用かもしれません。一見、脳への刺激になっているように見えても、うつや不安につながったり(参考文献9)、睡眠の質を低下させたり(参考文献10)することで、結果として脳の健康には悪影響を与えてしまう可能性があります。 以上から、子ども時代の勉強をサボることや、大人になって知的活動をやめてしまうことが認知症リスクにつながる過程は、次のようにまとめることができます。 1. 子ども時代の教育は認知予備力を高め、将来の脳の健康を支える基礎を作る 2. 大人になってからの知的活動は、認知機能を維持・向上させ、脳の健康を保つ 3. 継続的な知的活動は、社会経済的な状況を支えることにも繋がり、間接的に認知症リスクを低下させる可能性がある 4. 反対に、知的活動の不足やソーシャルメディアの過剰利用は、認知症リスクを高める可能性がある このように、子ども時代からの教育、そして大人になってからも継続的に知的活動に従事することがあなたを認知症リスクから守ることにつながります。また、仮にどこかで勉強をサボって負債を抱えてしまっても、その後の頑張りでその負債を返済し、貯金ができる可能性があります。 逆に、知的な活動が少なく、勉強の習慣がない人は、一歩ずつ認知症を近づけてしまっていると考えられます。 前回記事「SNSやYouTubeの見すぎは「うつ病」の引き金に。うつ病の治療は「認知症の予防薬」にもなる!【山田悠史医師】」>>
山田 悠史