遠藤章さん死去 コレステロールの合成妨げる物質「スタチン」発見
コレステロール値を下げる薬のもとになる物質「スタチン」を発見した東京農工大学特別栄誉教授、遠藤章(えんどう・あきら)さんが5日死去した。90歳だった。 【写真】遠藤章さん 関係者によると、告別式は近親者で行った。後日、しのぶ会を予定しているという。 秋田県出身で、1957年に東北大学農学部を卒業後、製薬会社に入社。73年、コメの青カビからコレステロールの合成を妨げる作用のあるスタチンを発見した。スタチンはその後、脂質異常症(高脂血症)の治療薬として開発され、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞の予防に貢献した。 スタチンは、悪玉とされるLDLコレステロールを下げる。スタチンから開発された薬は、世界100カ国以上で販売。服用者は数千万人に上るとされ、「世界で最も売れている薬」の一つとも言われた。 2006年に日本国際賞、08年にはノーベル賞の登竜門ともいわれる米ラスカー賞を受賞。11年に文化功労者に選ばれ、17年には医学分野で世界的な発見などをした研究者に贈られるガードナー国際賞を受けた。ノーベル生理学・医学賞や化学賞の有力候補とみられていた。 遠藤さんは山村の農家の6人きょうだいの次男。遊び場は山や川など自然の中で、スタチンを見つけるきっかけになったカビやキノコは身近な存在だった。18年に日本農芸化学会誌に寄稿した「研究者としての心がけ10か条」の第4条に、「自然を師とし、現場から学ぶ」と挙げた。 学生時代に遠藤さんに師事し、03年に研究室を継いだ、蓮見惠司・東京農工大名誉教授は「実験結果をきちんと見て、丁寧に理解する姿勢は、『自然から学ぶ』ことを本当の意味で実践されている研究者だった」と惜しんだ。(野口憲太)
朝日新聞社